
玄関から奥に向かって沈み込む廊下。平衡感覚が狂わされるのか、「めまいや吐き気がすることがある」と刈羽村西元寺の阿部サチエさん(60)は悩みを語る。中越沖地震による地盤の液状化現象で傾いた自宅で、夫の多助さん(66)と2人、修理の見積もりを頼んだ大工からの連絡を待つ日々だ。
今回、半壊の被害を受けた阿部さんの自宅は、中越地震では全壊と判定されていた。
夫の定年を機に数百万円掛けてリフォームした矢先に中越地震に襲われた。建物の半分を解体し、残った平屋部分を全面的に修理。基礎に沿って30カ所以上の地面に鉄管を打ち込み、土台を補強するなどした。
「ノイローゼになりかけた」という仮設住宅暮らしを終え、わずか1年半で再び、激震の悪夢に直面した。
「地震がまた来ると分かっていたら、もっと違う対策をしていたかもしれない。また修理するつもりだが、埼玉で働くせがれは帰ってこないと言っている。この家に金を掛けることがいいのかどうか…」。多助さんは迷いを口にする。
刈羽村では、中越地震で半壊以上の被害を受け、今回再び半壊以上だった二重被災住宅が80棟(8月15日現在)に上り、全世帯数の5・3%を占める。このうち2度とも全壊と判定されたのは6棟ある。深刻な状況を受け、中越地震の復興基金は、2つの地震で二重ローンを抱える被災者に手厚く利子補給を行うメニューを新設。義援金の第一次配分では二重被災の場合は、5割増しとする措置が取られた。
しかし、生活再建を支える制度のフレームは中越地震以降、大きく変わっていない。多助さんも「支援制度で使い勝手が良くなったところはないなあ」と実感を話す。
刈羽村で顕著だった液状化による地盤災害は中越地震でもクローズアップされた。宅地造成等規制法の一部改正につながったが、改正に伴う新規の事業も、要件の問題から中越沖被災地での適用は不透明だ。
二重被災の切実さの半面、社会の関心は中越地震とは少し様相が異なる。元山古志村長の長島忠美衆院議員は東京での印象として「中越沖は被害の伝わり方のインパクトが弱いような気がする」と実態との乖離(かいり)を危惧(きぐ)する。
全国からの義援金は13日現在、県集計で約50億円。中越地震の同時期の5分の1にとどまる。この違いについて、泉田裕彦知事は「中越地震は山古志の全村空中避難に始まり、河道閉塞(へいそく)による住宅浸水や土砂崩れ現場の奇跡の救出劇など、お茶の間に訴えるメッセージ性が強かった」と説明する。
善意は善意として、制度化された公平なシステムで生活再建を後押しするのが原則だ。その中心となるべき被災者生活再建支援法は、首相退陣表明に揺れる臨時国会で改正に向けた議論が始まろうとしている。「制度がどうあるべきか、新潟から発信しなければ」と長島議員。不運とはいえ活用実績を重ねた被災地としての大きな責任だ。
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