混迷自民党 政策なき争いは見苦しい

 自民党は野党に転落して以後、政権奪取の意欲がとみに衰えてきたようだ。
 半世紀以上にわたって政権を握ってきた反動という面はあるにせよ、お粗末な事態である。
 谷垣禎一総裁に交代を求める声や新党結成に向けた動きが強まってきた。総裁降ろしや分裂騒動は、与党時代から自民党の「お家芸」ともいえる。だが、今回は様相を異にしている。
 前政権でパートナーだった公明党は民主党との距離を縮めている。自民党の政治資金も潤沢ではなくなった。党の基盤が揺らいでいる。そのためか、党刷新などの訴えも迫力を欠く。
 与謝野馨元財務相が、月刊誌「文芸春秋」に寄稿し、新党結成も辞さないとの決意を明らかにした。鳩山由紀夫首相を「平成の脱税王」とこきおろしたのも、首相に退陣を迫るべき総裁が軟弱なための「喝」だという。
 麻生太郎氏と総裁選で争った与謝野氏は、谷垣総裁を誕生させた前回の総裁選には出馬しなかった。それを悔いているというのならば、思い切って行動に移すべきだ。
 総裁批判の口火を切ったのは舛添要一元厚生労働相だ。今月初め、「党内世論が総裁辞任で盛り上がれば、党改革が進むだろう」と谷垣降ろしを示唆して波紋を呼んだ。独自政策をまとめる勉強会を立ち上げるとも述べた。
 自民党はさまざまな主張を抱える派閥の集合体である。その摩擦熱がエネルギーの源ともいえた。
 谷垣総裁は、新党結成や体制刷新を求める動きに対して団結を強調するが、それだけではだめだ。公然と反旗を翻した議員には毅然(きぜん)たる対応を取りつつも、党全体の活力を落とさない度量とリーダーシップが求められる。
 そのためにも政策の対立軸をつくり出し、国民の選択肢を増やす地道な努力を重ねる必要がある。それが党再生の大きな力となる。
 1993年に下野した自民党が政権を奪回できたきっかけは、当時の細川政権の政治とカネにまつわる不祥事だった。この「成功体験」を再現しようとの狙いならあまりに小さい。
 国会は「政治とカネ」ばかりで、他の政策論争が見えてこない。日本のかじ取りの難しさが増しているとき、民主、自民両党のトップの指導力のなさが、国会のていたらくをもたらしている。もっと危機感を持つべきだ。
 政界は「勉強会」ばやりだ。過去に照らせば、再編の予兆と見ることができようが、政権交代の本質が何であったのかを問わねばならない。
 それは小選挙区制の下、二大政党制による政策本位の政治の実現ではなかったか。四分五裂のいまの自民党には託せそうもない。

新潟日報2010年3月14日

女性医師 息長く働ける環境整備を

 病院の勤務医不足が問題になる中、注目を集めているのが家庭を持つ女性医師への支援対策だ。
 せっかく専門的なキャリアを積んだのに、激務である医師の仕事と子育てを両立することができず、離職したり、非常勤に回ったりするケースがある。それは地域社会にとっても損失だ。
 医師国家試験合格者のうち、3人に1人は女性という時代である。医学部に進学する女性は今後も増えるだろう。若い世代には、結婚や出産も控えていよう。女性医師が息長く働けるような仕組みづくりは、社会的な要請と言っていい。
 家庭の事情や体調などに応じて柔軟に働けるよう制度を整えることで、女性だけでなく、医師全体の過重労働緩和にもつながるのではないか。
 県によると、県内の医師数は2008年末で約4500人。6人に1人が女性で、34歳以下の若手の比率が高い。医師不足が伝えられる産婦人科や小児科では約3割を女性が占める。
 県も10年度予算案の新規事業に、女性医師が子育て中も正規職員として勤務できるよう、条件を整えるモデル事業を盛った。現場での聞き取り調査などを行い、モデルとなる病院を指定して、女性医師が働きやすい職場づくりを支援する。
 具体策としては、短時間勤務やフレックス制の導入、当直の免除などが考えられる。院内保育の整備はもちろん、子どもが病気になったときに預けられる施設の確保も課題だろう。
 家庭の事情は人によってまちまちだ。勤務先の環境も異なる。大事なのは、女性医師の立場に立ってきめ細かな支援体制を組むことである。
 医師不足の中、産休や育休の代替要員を確保するのは難しいのが現状だ。医師の役割分担や運用の見直しを検討すべきだろう。特定の医師に負担が掛かりやすい主治医制ではなく、グループで患者を担当する診療態勢を取っている病院もある。
 情報の共有も必要だ。県内で復職を目指す女性の数などは把握されていない。技術の進歩が早い医療現場に復職したいと思っても情報が少なく、悩んでいる人がいるかもしれない。
 女性の離職防止と復職推進を目指して、県はこの1月「県女性医師ネット」をスタートさせた。県内の女性医師が出産や子育て、復職など悩みの相談に応じるものだ。7件の相談があり、うち1人が復職を目指して研修を受けることになった。
 男女雇用機会均等法が施行されてから四半世紀がたつ。女性が専門職として働き続けるためのノウハウは十分蓄積されている。医療現場でも本格的にこの問題に取り組む時期だ。

新潟日報2010年3月14日