水俣病救済期限 これで幕引きなどできぬ

 水俣病救済特別措置法に基づく救済申請の期限を7月末とすることを細野豪志環境相が発表した。
 当初は3月末も視野に検討していたが、本県などの被害者団体は「被害者の切り捨てに当たる」として期限を設けないよう求めていた。
 1月に本県で被害者らと面会した細野環境相は「3月末に締め切るような早急な対応はできない」と早期打ち切りを否定した。
 何のことはない、4カ月先延ばしするだけのことだったのか。この時口にした「歴史的な判断をするという自覚」には程遠い。被害者団体との面会は、パフォーマンスだったと受け取られても仕方がない。
 細野環境相は「期限を設けた上で、できる限りの救済をするのが政府の取るべき立場だ」と述べた。
 だが、期限をどうするかは、被害者の掘り起こしを十分に行った上で判断すべきことだろう。
 国が制度の周知に力を入れるのは当然のことだ。だが、示されたのは関係する県内外での説明会の開催や政府広報、関係自治体によるチラシ配布などにとどまる。
 期限までの半年間で、対象者を十分掘り起こせるのかは不透明だ。
 救済申請の受け付けは2010年5月から始まった。昨年12月末までに本県では1169人が申請している。
 本県だけでも毎月数十人が新たに名乗り出ている。申請はまだ続いているのである。
 こうした実態を踏まえなければ、特措法の趣旨である「あたう限りの救済」はできない。
 特措法は、救済開始から3年以内をめどに対象者を確定するとしている。来年4月末で制度開始から3年となる。7月末の期限は、判定に一定の期間が掛かることなどを踏まえたものだ。
 だが、「3年のめど」とは、原因企業や国の免責、時効を定めたものでは決してないのである。
 水俣病問題は複雑な経緯をたどってきた。被害者救済策は、継ぎはぎだらけだった。
 国の認定基準は厳しく、未認定患者の提訴が相次いだ。1995年の政治解決では約1万1千人が救済対象となったが、申請期間はわずか約5カ月にすぎなかった。
 04年の関西訴訟の最高裁判決を受けた今回の救済制度は「第2の政治解決」とされる。
 これ以上、被害者を置き去りにしてはならない。
 責任から逃げることはできない。最終解決につなげるには、被害者と誠実に向き合い、柔軟に対応していくことが欠かせない。

新潟日報2012年2月4日

電機大手赤字 雇用確保への不安が募る

 パナソニックの2012年3月期の連結純損益が、8千億円近い赤字の見通しになった。
 昨年10月の予想を大幅に下方修正した。赤字額は過去最大である。
 ソニーは2200億円、シャープは2900億円の赤字予想を発表済みだ。大手電機の不振が鮮明になっている。自動車とともに世界展開を引っ張る電機産業が、大きな壁に突き当たっているといえるだろう。
 主な要因として指摘されるのはテレビ事業の低迷である。
 薄型テレビ販売台数の世界シェアで、サムスン電子などの韓国企業が日本企業を上回っている。供給過剰で市場での価格は下落の一途となり、日本のテレビは競争力を失いつつある。
 過去、テレビ事業は日本の電機の「顔」だった。大規模な設備投資や人員が必要なだけに、販売台数減と低価格化は赤字に直結する。円高とタイの洪水がさらなる重荷となった。
 日立製作所は1月下旬、半世紀以上続けてきたテレビの自社生産から撤退すると発表した。
 てこ入れか、思い切った再編・改革か。テレビ事業の見直しは関係メーカーにとって、生き残りを懸けて取り組むべき緊急の課題だ。
 テレビだけではない。NECは3月期の純損益を黒字から約1千億円の赤字へと下方修正した。スマートフォン(多機能携帯電話)への転換が遅れ、携帯電話事業が不振だった。東芝は半導体の価格低下に苦しむ。
 経営環境の変化への迅速な対応が今ほど求められる時はない。欧州危機で輸出や景気の不透明感が高まっていることが、各社共通の懸念材料であるのはもちろんだ。
 じっとしていれば取り残されるだけだ。いかにして成長分野を見極め、収益性を高めていくかに知恵を絞ってほしい。将来の発展の基になる技術開発にも手を抜いてはならない。日本のものづくりの真価が問われる。
 心配なのは雇用へのしわ寄せである。NECは協力会社を含めると約1万人の人員削減を発表した。
 人員減計画の前倒しや工場閉鎖、海外への生産移転などを打ち出す企業が相次いでいる。
 やむを得ない面はあるが、コスト削減、縮小均衡だけでは寂しい。最大限に雇用を維持し、極力日本に踏みとどまる。そんな日本企業の哲学と意地を示してもらいたい。
 政府は目先の円高対策にとどまらず、日本経済と雇用をしっかりと支える姿勢を明確にするべきだ。
 空文とは言わないまでも新成長戦略の影は薄い。骨太の方針がなくては、貿易赤字脱却の道筋も見えてこない。

新潟日報2012年2月4日

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