日中韓共同宣言 「北」に言及すべきだった

 立場の違いやさまざまな摩擦を乗り越えて、互いに一致点を見いだす努力をするのが首脳外交の要諦ではないのか。
 北京で開かれた日本、中国、韓国の首脳会談は「共同宣言」で、核開発などで挑発を続ける北朝鮮について一切記述が盛られなかった。
 13日に発表予定だった宣言は文案で難航し、発表は14日にずれ込んだ。北朝鮮を刺激したくない中国に日本と韓国が押し切られた。
 日本にとって北朝鮮問題は会談の主要テーマだった。これでは十分な外交成果を挙げたとは言い難い。及び腰との批判も免れまい。
 北朝鮮と対話のパイプを持つ中国に譲歩したのだろうが、厳しいメッセージを発信すべきだった。
 危機感は3国とも共有しているのだ。会談で、中国の温家宝首相は朝鮮半島の緊張を防ぐことが「当面の急務」と言明した。日中韓が連携して北朝鮮の核実験阻止を求めていかなければならない。
 3国の足並みの乱れが目立った会談だった。驚いたのは、胡錦濤国家主席が野田佳彦首相との個別会談に応じなかったことである。
 東京で開かれている「世界ウイグル会議」参加者への日本政府の査証(ビザ)発給や、石原慎太郎東京都知事の尖閣諸島購入発言が影響したとの見方がある。
 胡主席は韓国の李明博大統領との個別会談はセットした。大国であり、会談のホスト国である中国が賓客の接遇に差を付けたと言わざるを得ない。こんな対応は国際社会からも疑問視される。
 日韓にトキを寄贈する署名式も行われる運びだった。韓国の準備不足を理由に中止された。
 日韓そろっての署名ではなく、それぞれ署名したいと韓国側が望んだ。李大統領が実績をアピールしたかったのだろう。政権末期とはいえ大人げないのではないか。
 野田首相は譲歩ばかりではなく、毅然たる態度を取るべき場面が、もっとあったはずである。
 前進したのは経済分野の連携だといえよう。温度差は見られたものの、3国が自由貿易協定(FTA)交渉の年内開始で合意した。
 中国の巨大市場は日本にとって無視できない。韓国も同様だ。3国のFTAが実現すれば、国内総生産(GDP)で世界の約2割を占める自由貿易圏になる。
 米国主導の環太平洋連携協定(TPP)への日本の交渉参加で、中国には焦りが見えた。対日貿易赤字を抱え慎重だった韓国も、FTAを先行させたい日中に歩み寄った。
 交渉妥結に向けては、貿易自由化でのメリット、デメリットを見極めながら、民間での議論も盛り上げていくことが重要になる。
 3国には歴史認識や領土、領海などの問題がある。しかし、東アジアの平和と繁栄は共通目標である。
 経済の枠組みが安定すれば、人的交流や文化交流が拡大する。政治的な諸課題の解決にもつながるのではないか。3国でそういう成熟した関係を目指したい。

新潟日報2012年5月16日

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