夏休みに入った7月下旬、生徒のざわめきが消え、静まりかえった県立長岡聾(ろう)学校の廊下に、小気味いい足音が響く。外は雨だ。全国高校総体(インターハイ)の陸上競技女子やり投げに出場した高等部三年の佐々木まなみさんが、黙々と助走練習を繰り返していた。
佐々木さんは今春の県高校総体で、大会新記録となる41b46を投げ優勝。北信越高校
総体ではさらに記録を伸ばし、42メートル43の自己ベストで4位に入り、インターハイへの切符を得た。インターハイでは、残念ながら予選落ち。しかし、耳が聞こえにくいというハンディに負けず、全国の強豪に交じって奮闘する身長150センチの小柄な姿に、会場から大きな拍手が送られた。
健常者にとっては当たり前のことでも、気を遣わなければならない。例えば、大会では審判の指示が聞きにくいことがある。そんな時、審判や近くの選手に直接聞いて確認する。
競技中は、選手の名前と顔、ゼッケンを覚え、自分の試技順を間違えないようにする。苦労が多い。だが、「体を動かしていないと気が済まない。スポーツをしない生活は想像できない」と日焼けした顔をほころばす。
中等部時代は野球部に所属。男子生徒の中に入っても抜群の野球センスを発揮し、投手とショートで活躍した。投手として肩の強さを見込まれ、高等部1年の秋、やり投げに転向した。
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小さいころ、父親とキャッチボールをした。狙ったところに投げられたときの喜び、バットに弾かれたボールが空高く舞い上がるときの感触…。野球ができる喜びは、健常者より大きかっただろう。
小学校では水泳、ソフトテニスも楽しんだ。スポーツをしているとき、佐々木さんの小
柄な体は、実際よりも大きく見える。将来は事務関係の仕事につくことを目指しているが、「できれば、スポーツをずっと続けたい」。
トン、トン、トトト…。何度も助走を繰り返す。高まっていく鼓動が心に直接響いてくる。空高く弧を描くやりの軌跡を確認するように、そのまなざしはまっすぐ前を向いていた。
写真=県高校総体で大会記録をマークした佐々木まなみさん。「もっと遠くへ」−。卒業後もやり投げは続けるつもりだ。
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