棋王戦

第26期 五番勝負第4局 戦いのあと


棋王戦史上初の11連覇

 将棋の第26六期「棋王戦」五番勝負第4局が19日、新潟市のホテルイタリア軒で行われ、羽生棋王(棋聖、王位、王座、王将)が、挑戦者の久保利明六段(25)に127手で勝ち、対戦成績を3勝1敗とし、タイトルを防衛した。残り時間は羽生棋王2分、久保六段が1分。羽生棋王が、新潟でタイトル防衛するのは今回で6度目。
 先手の羽生棋王は居飛車、対する久保六段は四間飛車と、双方得意の戦型で勝負はスタートした。羽生棋王が仕掛けて攻め、挑戦者が受ける形で進んだが、中盤からは久保六段が巧みに反撃し優勢が続いた。終盤ぎりぎりの攻防が続くなか92手目、久保六段が8一玉と逃げた手が失着。これを境に形勢がもつれた。
 100手目、久保六段が8八に勝負手の金を打ち込んだのに対し、羽生棋王は受けの妙手7九金。流れを引き寄せるとそのまま寄せきり劇的な逆転勝ちを収めた。  大激戦を制した羽生棋王は「(119手目の)7五桂でやっと良くなったと思ったが、最後までぎりぎりの勝負だった」と振り返った。
 立会人の井上慶太八段は「大熱戦だった。終盤のつばぜり合いを羽生棋王が見事に制した。久保さんには残念な将棋だったが、それだけ羽生棋王の逆転劇がすごかった」と解説した。

写真=棋王戦で史上初の11連覇を果たした羽生善治棋王=19日午後7時30分ごろ、新潟市のホテルイタリア軒

炸裂!!羽生マジック

 115手目。3七角を打ち込む羽生善治棋王の指が力強くしなった。棋王戦史上初の11連覇を確信した一手だった。19日、新潟市のホテルイタリア軒で行われた第26六期「棋王戦」五番勝負第4局は、今シリーズ最大の激戦となったが、将棋界の第一人者・羽生棋王が、新鋭の久保利明六段に逆転勝ちし、タイトルを防衛した。勝利を呼び込んだのは、終盤の受けの妙手で、「羽生マジック」健在をアピールした。
 中盤から終盤までは、久保六段のペース。対局控室では一時、「羽生棋王、ピンチ」の観測も流れていた。流れを変えたのは101手目の7九金。久保六段が「受けなし」と自信を持って、こま音も高らかに放った8八金に、羽生棋王が残り7分のなかから、貴重な3分も使って応じた一手だった。
 これが終盤の大逆転劇の始まりだった。立会人の井上慶太八段は「受けの勝負手だ」と絶賛した。この後、最終盤のぎりぎりの攻防に突入。秒読みに追われるなか、互いに小さなミスもあったが、115手目、久保六段の玉を遠くにらむ3七角が放たれた。小指を立てて、こまを盤面に押しつける得意の「グリグリ」に、控室では「棋王は勝ちを読み切った」との声が起こった。この次の一手で、久保六段は4六飛を打つ際に、こまを飛ばしてしまうほどの気合の入れようだった。
 午後6時55分、終局。勝者の羽生棋王は「苦しい将棋の連続で、まだ11連覇の実感がわかない」と疲れ切った様子。久保六段は対局直後の感想を聞かれても、小声で話すなど、目の前にあった勝ちを逃し、ショックを隠しきれなかった。両対局者の表情が、新潟決戦の激戦ぶりを物語っていた。


大逆転に会場どよめき

 棋王戦第4局の大盤解説が19日、対局会場と同じ新潟市のホテルイタリア軒で行われ、大勢の将棋ファンが駆けつけた。羽生善治棋王の11連覇がかかった大一番とあって会場は用意した150のいすが埋まり、立ち見が出る盛況ぶり。終局間近には200人を超えた。
 会場には、対局シーンと将棋盤がモニターテレビに映し出され、対局の様子が手にとるよう。断続的に開かれる大盤解説では、立会人の井上慶太八段と聞き手の安食総子女流2級が、ユーモアたっぷりのトーク≠披露し、会場を沸かせた。また2人が退場した間は北村俊県アマ名人、塚野良和元県アマ名人が大盤検討を行い、ファンを引きつけていた。
 終盤ぎりぎりの攻防のなか久保優勢が続き、「きょうは羽生さんの負けがみられるかも」という井上八段の解説も飛び出したが、まさかの大逆転に、会場からはどよめきが起こった。


「途中で負けたと思った」

 将棋の「棋王戦」(新潟日報社など主催)で11連覇を果たした羽生善治棋王(棋聖、王位、王座、王将)は激戦から一夜明けた20日、大逆転を演じた前日の対局を振り返り「途中で負けたと思ったが、自分でも驚いた」と喜びを語った。
 19日の対局は、将棋観戦記者が「棋王戦史上に残る」と言うほどの激戦。羽生棋王は「負けたと思って気持ちの整理を付けていた。形勢が接近して突然チャンスが来て、そこからが緊張した」と振り返った。具体的には「(93手目の)6六金から、どっちが競り勝つか分からなくなった」と分析した。
 また「神経を使う将棋だった。駒がぶつからない所でもいろんな駆け引きがあった」と話し、激しい戦いぶりをあらためて回想した。
 5歳年下、新鋭の挑戦者・久保利明六段については「これまでは先輩や同世代との対局が多かった。世代によって指し方が違うところがあって、久保さんは視点や発想が感覚的に違う。序盤の時点で終盤の形までうまく構想してくる」とし「吸収する点が多くあった」と評価した。
 3勝1敗で棋王戦史上初の11連覇を飾ったことには「去年の10連覇で大きな目標を達成し、今年はゼロから出発する気持ちでいた。最終局がなくてほっとした」と控えめに語った。新潟でタイトル防衛を決めたのはこれで6回目になったが「縁起のいいところだと思っています」と笑った。
 昨年4月からの年間対局数が19日で米長邦雄永世棋聖の記録と並ぶ88局、さらに年度内に89局の記録更新が確定している。「年が明けてから行けるんじゃないかと意識し始めた。実績ができてよかった。それだけこの1年は充実していた証拠かな、と思う」と満足そうな表情をみせた。

写真=「(一度は)負けたと思った」と前日の激戦を振り返る羽生善治棋王=20日午前8時前、新潟市のホテルイタリア軒

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