村上市の「都岐沙羅パートナーズセンター」が地域再生大賞

ムラの「お宝」をビジネス化

 新潟日報社など全国の地方新聞社と共同通信社が地域活性化に挑む団体を支援する「第7回地域再生大賞」で、村上市のNPO法人「都岐沙羅(つきさら)パートナーズセンター(PC)」が、本県から初の大賞に選ばれた。中間支援組織として行政や住民、企業を結び、それぞれの得意技を組み合わせて新たな活動を展開。集落の伝統技術といった「地域のお宝」を交流やビジネスにつなげ、若者の居場所をつくるなど、村上・岩船地域に活力を生んできた。

地域の魅力を引き出す

昔ながらの技術で縄を綯う「はつめの会」。都岐沙羅PCのアドバイスなどを受け、コミュニティービジネスとして確立した=2017年1月25日、村上市有明

 「こんにちはー、新しい拠点はどうですか?」。都岐沙羅PCのスタッフが今月中旬、長年アドバイスをしてきた村上市内の手仕事グループ「はつめの会」を訪ねた。代表の磯部勇作さん(67)は作業の手を止め、「ぼちぼちだね」。古民家を活用した新事務所の真ん中でいろりを囲み、和やかに話を交わした。

 都岐沙羅PCは1999年、県の地域活性化事業「ニューにいがた里創プラン」を利用し、行政と住民を結ぶ中間支援組織として発足。民間同士の連携など、より柔軟な活動に取り組むため、2002年にNPO法人化した。

 立ち上げ当初から尽力したのはコミュニティービジネス構築の支援。村上・岩船地域の各集落にある「お宝」に着目した。高根地区では廃校をどぶろく醸造所や食堂に再生した。大毎地区では地域ビジョン作成に加わり、湧き水を生かしたイベントを行う。

 地区の個性を見極めた上で助言したり、行政の補助金をうまく使って資金援助したりと、魅力を最大限に引き出す応援をしてきた。忠隆司理事長(66)は「縁の下の力持ちのつもりで続けてきた」と語る。

 はつめの会もコミュニティービジネスで羽ばたいた団体の一つだ。笹など朝日地区の自然素材を使い、手仕事で枕などを作ってきた「農家のお母ちゃん」らの集まり。さらなる活性化を目指して01年、都岐沙羅PCに専門家の紹介を受け、草や木の皮で綯(な)った縄を主力商品にした。

「はつめの会」の縄を使ったスニーカー(右)と、1着20万円のダッフルコート(左)=visvim提供

 素材が優れ、作りも丁寧な縄は次第に注目を集める。東京の高級クラフトショップに並び、アパレル業界の注文も来だした。今では1着20万~120万円のコートや、5万円のスニーカーの靴ひもに採用される。

 アパレルブランド「visvim」を営む「Cubism」(東京)の担当者は「工芸ではなく一般の人が培ってきた技に興味があり、はつめの会に出合った。全て手作業の上、品物のレベルが高い」と評価する。

 はつめの会には若手のメンバーもおり、縄綯いの技は受け継がれつつある。「縄綯いは農閑期の仕事だった。都岐沙羅の協力がなければ、こんな展開はできていなかったし、技術継承も難しかったかもしれない」と磯部さんは振り返る。

 傍らで縄を綯う高橋カツさん(75)は「昔は自分らで綯わなきゃ、農家の山仕事ができなかった。幼い頃を思い出しながら楽しんでます」と笑顔を見せた。

若者に人気!おしゃべりCafe

月1回、若者の集える場として開催される「おしゃべりCafe」。参加者はお茶を飲みながら和気あいあいと談笑していた=2017年1月25日、村上市鍛冶町

 毎月1回、村上市鍛冶町のモデルハウスには、若い会社員や主婦、学生らが大勢集まり、にぎわいを見せる。都岐沙羅PCが2014年から開催するおしゃべりCafe(カフェ)だ。若者が自由に集える場をつくろうと始まった。

 開設のきっかけは、定住促進に向けて市から受けた婚活事業の依頼だった。都岐沙羅PCの佐藤香さん(29)は「婚活に限定すると敷居が高い。多くの若者が集い、築いた絆を外でも生かせる場にしようと考えた」と経緯を語る。

 さらに、同じ頃、モデルハウスに人を集める活用法を模索していた工務店と、企画を結び付けた。複数のニーズや得意技を合わせて生かすマッチングは、都岐沙羅PCのおはこだ。

 2014年12月の初回に10人ほどだった参加者は、熱心な広報と口コミで回を重ねるごとに30、40人と増えた。

 1月25日のカフェでもオープンの午後3時から続々と参加者が訪れた。「どこに住んでいるの?」「いいもの買ってきたよ」。初対面でも垣根なく語り合う。多彩な「知り合い」の輪が広がろうとしている。

 リハビリテーション大3年の学生は「いろいろな人と関われるのが魅力。学生と地域をつなぐ懸け橋にもなっている」と話す。

 出会いを機に外へ打って出る動きも。カフェに通う学生らは昨夏、性的少数者(LGBT)への理解を深める講演会を開き、市内外から多くの参加を得た。

 佐藤さんは「今春からは独身、母親などテーマを決めたカフェも開き、より発展的な関係の構築に役立てたい」と展望を語る。

東京・銀座で『はさ掛け』も

村上・岩船地域で収穫した稲穂を東京・銀座ではさ掛けして産品や地域をPRした=2016年9月、東京都

 都岐沙羅PCは、村上・岩船地域の魅力を外部に発信し、交流を生み出す「つなぐ」活動も行う。

 東京・銀座。国内屈指の繁華街に毎秋、村上市内で収穫した酒米の稲穂のはさ掛けが登場する。都岐沙羅PCが事務局を務める「村上地域グリーン・ツーリズム協議会」が、地元農業をPRするものだ。併せて圏域の食材を持参した交流会も催す。今では村上で取れた野菜や卵、コメなどを取り寄せる銀座の店舗やファンも増えてきたという。

 「銀座ではさ掛けを始めて6年ほど。認知度も上がっているようです」と都岐沙羅PCの鈴木信之さん(55)。「さまざまなPR活動で産品を知ってもらうのはもちろんだが、こうした交流を通じて村上・岩船に来てもらうのが最終的な目的。今後も交流人口が増える機会をつくっていきたい」と意気込んでいる。

住民自ら課題解決

小規模多機能自治について学んだあらかわ地区まちづくり協議会の研修会=2017年1月22日、村上市山口

 都岐沙羅PCが今後力を入れる方向なのが「小規模多機能自治」だ。少子高齢化が進む中、小学校区程度を一つの単位に、防犯や交通、福祉など地域ごとの課題を地域で解決するという考え方。22日には村上市のあらかわ地区まちづくり協議会が、都岐沙羅PCの斎藤主税事務局長(45)を迎えて研修会を開いた。

 村上市では高齢化率が35%と全国平均より高い。斎藤事務局長は「生産人口が減り、税収も減る中、行政支援には限界がある。地域の課題を見極めながら、実情に合わせた事業を地域で考える必要がある」と説明。「まずは各集落で中学生以上にアンケートをすると、全世代の考え方が見えてくる」と呼び掛けた。

 研修会を企画した市荒川支所自治振興室の小川良和室長(51)は「集落の現状を知り、将来どうしたいかを住民中心で考えるきっかけにしたい」と話した。

地域再生大賞

 人口減少などで厳しくなる環境をはねのけ地域活性化に取り組む団体を、新潟日報社など全国の地方新聞社と共同通信のネットワークで取り上げ、エールを送ろうと2010年度に設けた。都道府県から原則1団体ずつ計50団体を推薦し、専門家による選考委員会が審査にあたる。第7回までの受賞団体は計350団体となり、地域づくりの輪を広げている。本県からは、第6回に「沼垂テラス商店街(テラスオフィス)」(新潟市中央区)が準大賞、第4回に「かみえちご山里ファン倶楽部(くらぶ)」(上越市)、第5回にNPO法人「十日町市地域おこし実行委員会」(十日町市)がそれぞれ特別賞を受けた。

47NEWS「地域再生大賞」≫
北陸新幹線で行こう!北陸・信越観光ナビ

クローズアップ