
ウイルス性肝炎は、肝炎ウイルスの感染によって引き起こされる肝臓の疾患で、A型~E型に分類される。このうち、非加熱の魚介類や豚肉などから経口感染し、急性発症するものの、ほぼ自然治癒するのがA型とE型。これに対し、血液感染によるB型、C型は慢性化し「肝硬変、肝がんへと病状が悪化する危険性があるため、特に注意が必要だ」と青柳豊教授は指摘する。
国内のB、C型ウイルスによる感染者は合わせて350万人。感染経路は、B型のほとんどが出産時の母子感染。一方、C型は輸血や血液製剤・フィブリノゲンの投与歴などがある人で、特に40歳以上に多いという。
一方、肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれ、なかなか自覚症状が出ない。そのため、肝炎患者の病気に対する危機感が乏しいのが現状だという。B型肝炎患者の9割以上は症状が出ずに一生を過ごすが、C型患者は7割の人が慢性肝炎、肝硬変へと進む。肝硬変になるとようやく自覚症状が現れるが、その段階まで進行すると年率5~7%の確率で、がんを発症するという。
特にC型患者については感染後、25年から30年経過すると相当高い確率で肝がんに至るといい「放置し続けるのは、発がんを黙って待つのに等しい。早い段階で感染を発見し、適切な治療を受けることが望まれる」と強調する。
基本的な対応として、専門の医療機関でウイルスの有無を調べる血液検査を推奨。「肝炎は自覚症状がないのが問題で、検査を受けない限り発見は難しい」と理由を挙げる。
国は、肝炎対策として2002年度から5年間、患者数の比較的多い40歳以上を対象に5歳刻みで無料検診を実施したが、青柳教授は対象人口の3人に1人しか検診を受けていない点に着目。「完全な把握、自己認識ができていない状態で、隠れた患者は多いはず」と警鐘を鳴らす。
特に肝がん原因の8割を占めるC型慢性肝炎については、有効な治療法として体内からウイルスを除去するインターフェロン治療(抗ウイルス療法)を挙げる。近年では内服薬のリバビリンとの併用で完治の確立も高まり、効きにくいとされるタイプ(1b型・高ウイルス量)でも6割が治癒状態に、それ以外は9割程度完治する。
効果は人によって異なるが「仮に完全にウイルスを消せなくてもウイルスを減らし、進行を遅らせることで発がんを予防する効果も期待できる」と治療の有効性を強調する。さらに、14年まで医療費の一部公的助成があり、月額1万~5万円の自己負担に軽減され「これを機に治療を検討してほしい」と呼び掛ける。
ただ、インターフェロンは副作用が伴うため、専門医などと十分な話し合いが必要とも付け加える。最近は週に1回の注射が主流で、最低でも6カ月、高い効果を期待するには1年~1年半の治療期間が必要になるとし、その間の副作用として脱毛、発熱、だるさなどを挙げる。
重症例では、うつ状態や呼吸不全などの症状が出る間質性肺炎などが起きることもあり、「特に60歳以上の人の治療には注意深い経過観察が必要」と補足する。v
B、C型肝炎患者の日常生活の注意点として、肥満は肝臓に負担が掛かるため、メタボリック症候群を避ける適度な運動と高タンパク、低脂肪の食事に心掛けることが大切で「アルコールの摂取もほどほどに」と忠告する。
また、日常生活における他人への感染は非常にまれで「食器や入浴などでの感染の心配はない」とした上で、基本的なマナーとして(1)歯ブラシやカミソリの共用(2)食べ物の口移し(3)献血-などは絶対にしないよう注意を促す。
青柳教授は「肝機能障害が出ても飲酒を理由に簡単に考える人が多いが、肝がんで死に至る人の9割以上がウイルス性肝炎だということをきちっと認識してほしい」と強調。「早期発見、早期治療には患者とかかりつけ医、専門医の三位一体の診療体制を進めることが肝心」と訴える。