
結腸と直腸からなる大腸。小腸から送られた便液から水分や電解質を吸収して便を肛門に送る働きを持ち、長さは約1・5メートルに及ぶ。
がんは腸の内側にある粘膜上皮に発生。進行度(ステージ)は腫瘍(しゅよう)の深達度や、リンパ節と他臓器への転移の有無により決まる。
元来、欧米で多い疾患だったが、国内でも肺がんや乳がんと同様に罹患率が急増。肺がん、胃がんに次いで死亡数の多いがんとなった。畠山教授は「数年後には減少傾向にある胃がんを抜く」とみる。部位別では、結腸がんが約3分の2を占める。
患者は男性に多いのが特徴。男女とも60代が多く、50代、70代と続く。詳しい原因は不明だが、高脂肪・低繊維食やアルコールの長期多量摂取といった生活習慣が危険因子として指摘されている。
治療は手術での切除が基本。早期がんでは肛門から挿入した内視鏡を使ってがんのある大腸の表面だけを切除する。通常、入院の必要はなく「治療中や治療後も痛みをほとんど感じずに済む」という。
リンパ節に転移している疑いがあれば、外科手術でリンパ節の切除まで行う。近年は、5~12ミリずつ切開した4、5カ所の穴からカメラや電気メスを入れて腸を取り出し、がんを切除して戻す「腹腔(ふくくう)鏡下手術」が増加。腫瘍が小さく、他臓器への浸潤がなければ可能な術式で「入院は1週間から10日程度。傷も小さく、体への負担も少ない」のが特徴だ。

さらに進行している場合は、開腹してがんのある腸管やリンパ節を切除する。
直腸がんではかつて、肛門近くにあるがんは肛門ごと切除し、腹部に便の排せつ孔(人工肛門)をつける手術が大半だった。しかし近年は、医療機器や技術の発達により肛門管の一部に浸潤しているがんでも肛門とその機能を温存して切除することが可能になっている。畠山教授は「日常生活に支障を来すことは少なく、手術後のQOL(生活の質)を高められる」とその意義を語る。
一方、がんを切除しきれなかったり、再発したりした場合は、化学療法(抗がん剤治療)が行われる。畠山教授は「根治性を求めるなら手術だが、抗がん剤での延命効果も望めるようになってきている」と強調。新たな抗がん剤の開発により、化学療法を施した患者の生存期間は30年前の約4倍にまで延びているという。
また、近年では化学療法と手術を組み合わせる治療法も注目されている。これまで手術ができなかった大腸がんの肝転移であっても、化学療法でがんを縮小させることで切除が可能になるケースもある。畠山教授は「術前の化学療法は増えており、これからの治療法として期待できる」と話している。

大腸がんはステージ1ならば、5年生存率が9割を超えるなど「最も治りやすい消化器がん」の一つといわれている。同大第1外科の下部消化管チーム飯合恒夫講師は、「早期発見、早期治療」の必要性を訴え、定期検診の受診を呼び掛けている。
大腸がんの症状は、腹痛、下痢、便やガスが出にくくなる、便に血液が付着する血便などがあり、腹部にしこりができることもある。ただ、このような症状が出たときにはがんが進行している場合が多く、早期がんであることは少ない。このため早期発見の有効な手だてとなるのが「大腸がん検診」だ。
県内の大腸がん検診の受診率は全国水準より高いが、それでも2割強にとどまっている。「罹患率が高い40代以上は症状がなくても、年1回必ず検診を受けてほしい」と飯合講師。
大腸がん検診は、肛門からカメラを入れることに抵抗感を持つ人が多いが、通常は便を採って中に血が混じっているかを調べる「便潜血検査」を2日間行う。便に血液が混じっているという結果が出た場合は、内視鏡や注腸検査などの精密検査が必要だ。
内視鏡検査は、直腸や盲腸までの全大腸を詳細に調べることができ、ごく小さながんでも発見することができる。検査当日に腸管洗浄液を飲み、大腸に残っている便を全て排出する必要があるが、検査は20分程度で多くの場合は、それほど苦痛はないという。
県内で大腸がん検診によって発見されるがんの約70%は早期がんで、この時期に治療されれば、ほとんどの人が完治できる。飯合講師は「早期に発見できれば内視鏡や腹腔鏡手術など、体に負担がかからない方法で治療ができ、しかも、がんが治る可能性が高くなる」とアピールする。