ミッドナイト・バス 思いを乗せて 関係者に聞く

 夜行バスの運転手を主人公に家族の絆の再生を描く映画「ミッドナイト・バス」が4月、クランクアップした。スタッフや出演者、それぞれの思いを乗せて本県をカメラが駆け抜けた。来年初春には県内で先行上映予定。約1カ月の撮影を終えた竹下昌男監督と、原作者の伊吹有喜さんに思いを聞いた。

 

原作者・伊吹有喜さん 多様な親子関係描く

「新潟市では萬代橋や信濃川、上古町商店街の風情がとてもすてき。どっぺり坂からの眺めも好きです」と話す伊吹有喜さん

 最初に「ミッドナイト・バス」で深夜バスの話を書くことになったとき、いくつか候補の土地がありました。その中で新潟と東京とを結ぶ、長い関越トンネルは一つの鍵になりました。トンネルを越えると天候ががらりと変わるのを体験し、新潟を舞台に、トンネルを越えると男、戻れば父親という、男性の二面性を描けるのではと思いました。

 竹下昌男監督の印象は、穏やかで誠実な方。映画撮影の現場を拝見できて、本当にうれしかった。登場人物のせりふを、俳優さんの体を通して聞ける。文字だったものが立体化して、すてきな声に乗って耳に届く。感動しました。

 主演の原田泰造さんが、演技のために大型バスの免許を取られたと聞いて、そこまでしていただいて「リイチ(主人公・高宮利一(としかず)の愛称)、よかったなあ」と。新潟日報の記事で、地元の方もエキストラとして参加されていると知りました。本当に幸せな作品です。

 主人公と義理の父、元妻とその父、主人公と子どもたち-。「ミッドナイト・バス」には、さまざまな親子の関係が描かれます。「お父さんに一声掛けてみようかな」とか「子どもとちょっと話してみようかな」とか、そうしたきっかけになってほしい。

 新潟のまちの魅力や、人情の厚さが伝わったらうれしいです。新潟とは「ミッドナイト・バス」の前の作品からご縁がありました。天竜川の奥の山林王一族を書いた「なでし子物語」。旧家の生活様式や考え方を知るため、新潟市の豪農・伊藤家について取材をしました。

 

新潟の風土、人情に感動

 取材の折、新潟の人の温かさ、人情、風土は本当にすてきだなと思いました。新潟市の北方文化博物館では、昔の話やお屋敷の造りについて教えていただき、物語の舞台になるお屋敷の半分はそれをベースに作りました。

 新潟に来るたび、新潟市のシティガイドさんの案内で歴史を学び、おいしいものを巡りました。地域や方言の話を伺い、冬に歩くときはカイロをくださった。お気遣いがうれしかったのと、お米とお魚がおいしかったのが印象的でした。

 食べ物のおいしさは作品にも影響を与えています。原作の「ミッドナイト・バス」にも万代シテイバスセンターのカレーや、たれカツなどが登場しますが、書ききれなかったものがたくさんありました。だから以後の作品にもかんずりや村上のサケが出てきたり、新潟出身の女性が登場したりします。そうしたものも、新潟の魅力ですね。

 

<いぶき・ゆき> 1969年、三重県生まれ。中央大法学部卒。出版社勤務、フリーライターを経て2008年「風待ちのひと」で小説家デビュー。次作「四十九日のレシピ」は連続ドラマや映画化された。2014年「ミッドナイト・バス」で第27回山本周五郎賞、第151回直木賞の両候補。

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