初夏の北風をはらみ、ぐわっと舞い上がった大凧が、敵陣の凧めがけて一気に突進する。勇猛な上空の対戦を操る地上を見やれば、生きのいい若い衆が血気と怒号をまき散らす、喧騒の世界だ。
梅雨入り間近の六月上旬、白根(新潟市南区)、三条、今町(見附市)・中ノ島(長岡市)の県内三地域で凧合戦が繰り広げられる。これだけの凧合戦が集中するのは全国でも新潟だけだ。互いの糸を絡め合い、落とし合い、大勢で力一杯引き合って相手の糸を切る。武者やらダルマやら色とりどりに描かれた大凧は、やがて壊される運命を知っているかのように、青空をつかの間、鮮やかに美しく彩っては、潔く駆け抜けていく。
地元の人々が待ちこがれ熱狂する年に一度の祭り。その華やかさの裏側には、藩政時代からの水利をめぐる地域間の緊張関係や、身分差への反発心が、秘められたエネルギーとなって脈々と受け継がれていた。そんな越後の地ならではの意地と誇りが、数百年の歴史を経た今も、人々の心をつなぎ、凧の姿を借りてぶつかり合うのだ。
戦いの季節がまたやってくる。出陣を前に凧合戦のふるさとを歩いた。
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