新聞生かし公開授業

(2007/11/26)


 本年度の新聞活用(NIE)実践校に委嘱されている長岡市立東北中学校(古沢誠校長)と上越市立高志小学校(小松隆校長)はこのほど、新聞を生かした公開授業と研究協議会を実施した。東北中では飢えに苦しむ子どもたちの現実を学んで「食」の大切さを実感。高志小では自分たちで切り抜いたスクラップをお互いに見せ合って社会への関心を高めた。

「NIE」(エヌ・アイ・イー)とは、英語のNewspaper In Education=ニューズペーパー イン エデュケーション=の略。「教育に新聞を」と訳され、新聞を生きた教材として役立てようという取り組みのことです。




飢餓の報道で食育

長岡・東北中

 長岡市の東北中学校は二〇〇六年度から、総合学習と特別活動の時間に、全校で食育の学習に取り組んでいる。主に栄養面について学んできたが、十一月八日には、各学年の一クラスずつが新聞を使って社会的な観点から学習した。

 二年五組の三十五人は、給食を通して世界の飢餓について考えた。

 冒頭、担任の井口尚美教諭が前日の給食の残りをスライドで見せ、全校でパン約三十個、スープとサラダ五十−六十人分、牛乳十三本が残ったと説明した。給食が残る理由について、生徒たちは「嫌いな物だから」「おなかがいっぱいだから」などと意見を述べた。

 井口教諭は、世界では約八億五千万人が栄養不足の状態にあり、毎日二万五千人が飢えで亡くなっているという記事を紹介。続いて、世界各国の栄養の過不足状況を色別で表す「ハンガーマップ」を見せた。

 栄養不足を示す赤色がアフリカに広く分布することなどを説明した後、エチオピアの食糧事情に関する記事を読み上げ、救援施設で配給される食糧が一日一回のビスケットと粉ミルクだけであること、空腹でハエを払いのける力もない子どもがいることを伝えた。

 生徒たちは記事への感想を書き、班ごとに「アフリカの給食は少ない」「協力(ボランティア)したい」などの意見を見せ合った。

 ここで、生徒たちにエチオピアで配給されるビスケットをミルクに混ぜた物が配られた。試食した生徒は「味がしない」「おいしくないよ」などと感想を口にしたが、中には「でも、これを食べられる人は幸せだな」と話す生徒もいた。

 この後、井口教諭が、日本人が年間二千トンの残飯を出していること、難民への配給が年間一千トンであることを話すと、教室は静まりかえった。

 最後に給食の残飯ゼロ百日間を達成した上越市立城東中の記事が紹介され、生徒から「すごい」という声が上がった。井口教諭は「東北中も残飯をゼロにしていきたい。給食と世界の飢餓を関連させて考えてみてほしい」と結んだ。

 授業を受けた金内友樹君(14)は「日本人の残飯をなくせば、もっと世界の人を幸せにできると思った。給食は残さないが家だとたまにご飯を残してしまうので、食事の前にはあまりお菓子を食べないようにしたい」と話していた。

 このほか、一年七組は地球に優しい食生活、三年五組は日本の食の問題について授業を行った。


写真=アフリカの飢餓に関する記事やVTRの感想を見せ合う生徒たち=長岡市川崎5の東北中学校

生徒の認識揺さぶる

−研究協議会

 授業後に行われた研究協議会では、井口教諭が「最後が急ぎ足になってしまい、残念。食育新聞を作るという狙いを知らせたかったが、あまり伝わらなかったと思う。生徒はただの食の授業だと思ったのではないか」と反省点を述べた。

 新潟大学教育人間科学部の宮薗衛教授は「日本は世界の中で少し特殊な状況にあるのだと、生徒の社会認識を揺さぶっていくものになっていた」と講評。「新聞だけでなく、映像、写真、話して聞かせることばなど多様な情報源があった。いろいろな角度から、世界の飢えている現実を知ることができた」と評価した。

 また、宮薗教授は「最後の城東中の記事は、こうなってほしいという願いでもある。こちらを焦点にすることで『取り組みをどうするか』『もっと知りたい』という関心が浮かび上がるかもしれない」と話していた。






読みたい記事 スクラップに

上越・高志小

 相違、創意、総意の三つの「そうい」を大切にする教育を展開している上越市の高志小では、六年生と四年生の授業を公開した。このうち六年生は「わたしたちの願いを実現する政治」と題して授業を展開した。

 六年一組では五年生の時から、社会科の授業の冒頭に、新聞各紙が一面で報じている記事について、教諭が児童にクイズを出題してきた。

 児童の大半は普段、あまり新聞を手にすることはない。しかし、「活躍している宮崎県知事の氏名」や、「取引市場で最高値を更新し続ける資源の名前」などを問うことで、時事問題への関心を養ってきた。

 この九月からは、全国紙や地方紙など五つの新聞を教室に置き、児童が自由に読める環境をつくった。そして政治分野に限らず、「読みたい」と思う記事をスクラップさせた。

 公開授業で子どもたちは、束となったスクラップを見せ合い、記事のどこに注目したのかを意見交換した。

 児童が集めた記事はスポーツ、環境、身近な事件事故などさまざま。四人一班に分かれた児童は「上越市がどんな状況にあるのか追い掛けた」「父の会社が作る商品の記事を集めた」と、自分のスクラップの特徴を話した。

 それを基に「同じことを取り上げているのに、新聞によって内容が違うのはなぜか」「スポーツニュースは、テレビが分かりやすいと思っていたが、新聞も良かった」などと感想を出し合った。

 一見、異なる分野の記事が並ぶスクラップを手に、担任の滝沢幹愛教諭は「大きなカラー写真が使われているという共通点がある」と、記事内容以外にも着目する視点をアドバイス。自分がどんな傾向の記事を選んでいるか、新聞によって紙面の扱いがどう違うかなど、次回の授業に向けてまとめるよう子どもたちに声を掛けた。


写真=関心を持った新聞記事をスクラップし、感想を話し合う6年生たち(上越市木田3の高志小)

自分なりに視点持つ

−研究協議会

 研究協議会で、滝沢幹愛教諭は「テーマを政治としたが、政治に限ると児童には難しかった」とし、「テーマは問わずまず興味がある記事を読み、それを集めさせた。その傾向を発表し合うことで、自分と友だちの関心を理解することを目指した」と説明した。

 見学者からは「授業前のクイズは、世間に目を向ける良いきっかけとなる」「記事を選ぶには、もっと新聞を読む時間が必要ではないか」といった意見が出た。高田喜久司・上越教育大副学長は「教室だけに新聞を置くのではなく、児童玄関などにも配置し、学校全体で読めるようにしてほしい」とした上で、「児童は自分なりの視点に気付き、論点をまとめていた。他人の関心を理解する大切さも勉強したと思う」と評価した。



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