東京五輪が8日、閉幕した。新型コロナウイルスの感染「第5波」が猛威を振るう状況下での「平和の祭典」だった。

 日本人選手のメダルラッシュが続く一方で、国内の新規感染者数は急速に増えた。多くの国民は複雑な思いで見守ったことだろう。

 ウイルス禍の中、強行開催した東京五輪は、五輪とは何か、どうあるべきかという点で重い問いを突き付けた。祭典の光と影を冷静に見つめ、胸に刻む必要がある。

◆新風吹き込んだ選手

 競技の面では新たな風を感じさせる活躍が目立った。

 今大会には5競技18種目が加わり、このうち「都市型スポーツ」と呼ばれるスケートボードやスポーツクライミング、サーフィンでは日本代表の若者がメダルを次々に獲得し、注目を集めた。

 スケートボードの選手が演技を終えると、他の選手がわが事のように喜び、健闘をたたえる光景は印象的だった。国の壁を超え、競技者が一体となって自由に楽しむ姿は新鮮な感動を呼んだ。

 東京五輪は、参加者の男女比率ほぼ同数を実現した最初の大会でもあった。初採用された柔道や水泳、卓球などの男女混合は、試合展開の面白さの面からも新たな五輪の魅力を創出した。

 性的少数者(LGBTQ)を公表した選手が増えたのも特徴だった。その数は180人以上とされ、前回大会の3倍以上となった。

 五輪は、人権や多様性尊重などの理念を掲げるが、今大会は組織委員会トップの女性蔑視発言など関係者の差別的言動が発覚した。

 そうした中で、五輪の理念を体現して大会に臨んだ選手たちの姿が、社会を前進させる強いメッセージとなってほしい。

◆県勢健闘たたえたい

 日本が獲得したメダルは金27、銀14、銅17の計58個に上り、金メダル数、メダル総数とも過去最多を更新した。

 自国開催に向けた強化策が実を結んだといえる。感染禍の中、日本での調整が不十分な海外選手が多かったこともあるだろう。

 本県勢は柔道の向(むかい)翔一郎選手(白根小出)が混合団体メンバーとして銀メダルを獲得した。

 競泳の男子400メートルメドレーリレーでは、バタフライの水沼尚輝選手(新潟医療福祉大職員)が力泳し、チームは日本新記録を出して6位に入った。

 両選手とも個人戦や個人種目で思うような結果が出せず、その悔しさをバネにチーム戦に臨んだ。健闘を改めてたたえたい。

 勝ち上がりにはつながらなかったが、志水祐介選手らブルボンウォーターポロクラブ柏崎所属の3人がメンバーの男子水球は37年ぶりに五輪勝利を挙げた。

 男子バスケットボールの富樫勇樹選手(新発田市出身)は全3試合に出場し、持ち前の速さやシュート力で強豪チームを翻弄(ほんろう)した。

 男子マラソンの服部勇馬選手(十日町市出身)は体調を崩しながらも懸命に走りきり、73位でゴールした。

 東京五輪を巡り、際立ったのは、国際オリンピック委員会(IOC)幹部の独善的言動だった。

 バッハ会長は6日の会見で「日本人が五輪を支持し、受け入れていると結論付けられる」と強調した。8日のIOC総会では「われわれは成功裏な大会を経験した。正しいタイミングに開催されたと自信を持って言える」と述べた。

◆募るIOCへの疑問

 真夏の五輪開催時期を見直すべきではないかとの指摘や開催都市の費用負担が大きすぎるとの記者の質問に対しては、明確な回答を控えたり、IOCの正当性を主張したりするだけだった。

 感染禍の中での開催への批判もなかったことにするかのような姿勢には疑問が募る。それが新たな問題を生むことはないか。

 今後大きな課題となるのは、費用負担をどうするかだ。

 ほとんどの会場で無観客開催となり、900億円を見込んだチケット収入の大半が消えた。大会1年延期と感染対策による支出も増大し、大会組織委が赤字になることは確実だ。

 今後の協議には、東京都や政府だけでなく、負担に否定的なIOCも加わり、国民の納得のいく結論を出すべきだ。

 心配されていた五輪による感染拡大について、菅義偉首相は6日、「国民の人流は五輪前から増えておらず、五輪が感染拡大につながっているという考え方はしていない」と否定した。

 だが、感染力の強いデルタ株やワクチン接種の遅れに加えて、五輪による自粛ムードの緩みも感染拡大の要因とする見方は根強い。

 東京五輪は誰のため、何のための大会だったのか。感染禍の下での開催は本当に正しかったのか。私たち国民一人一人が考え続ける必要がある。