フジロックフェスティバル開催に向けて、ステージや機材の設営が行われている会場=17日、湯沢町三国
フジロックフェスティバル開催に向けて、ステージや機材の設営が行われている会場=17日、湯沢町三国

 新潟県湯沢町の苗場スキー場で、国内最大級の野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」が20~22日、開かれる。昨年は新型コロナウイルスの影響で初めて全日程を中止。感染防止策を取った上での2年ぶりの開催に、地元の宿泊業者やファンからは期待の声が上がる。一方、全国的な感染拡大に歯止めが掛からない中、懸念を示す町民は少なくない。期待と不安が交錯している。

 野外フェスの先駆けとして1997年に始まったフジロックは、3回目の99年から苗場に会場を移した。例年、国内外から200組以上が出演し、期間中は延べ約10万人以上の観客が訪れる大規模イベントだ。

 ことしもMISIA(ミーシャ)さんやKing Gnu(キング・ヌー)ら人気アーティストが出演する。ただ新型ウイルスが猛威を振るう中、海外からは呼ばず、出演者を国内に限った。会場内での飲酒を禁止にし、ステージ数も減らした。

 イベントを運営するスマッシュ(東京)の石飛智紹取締役(62)は「昨年は新型ウイルスの前になすすべが無かった。今は感染対策の知恵やマナーも広がり、検査もやりやすくなった」と語り、開催できる状況は整っているとする。

 県、町とも協議を重ね、出演者を含めた数千人規模の関係者へのPCR検査を実施。観客にも希望者には事前に抗原検査キットを無料で送付した。対策ガイドラインを設け、客同士の接触防止も呼び掛ける。   

 「ウイルス禍で開催する特別なフジロック」(運営事務局)に地元やファンの受け止めはさまざまだ。

 苗場地区の男性(63)が経営する宿は、フジロックの期間中は満室状態だ。だが、夏の合宿予約は途絶え、ウイルス禍前と比べて売り上げは約8割減少、借入金もかさんでいる。男性は「感染はもちろん心配だが、このままでは経済面でやられてしまう。楽しんで頂けるように宿でも対策をして迎えたい」と前向きに捉える。

 フジロックに10年以上通う十日町市の会社員男性(37)は、感染リスクがあることも熟考した上で行くことを決めた。逆に諦めたフェス仲間もいる。「いろんな意見はあるが、最後は自分の判断。ルールを守り、行けない仲間の分も楽しみたい」と話す。

 一方、首都圏などでの緊急事態宣言下の開催に疑問を呈する町民もいる。温泉街の40代小売業女性は「感染禍も何十年と続くことではないと思う。命を大事にする上では、今は我慢の時期ではないか」と率直な思いを明かした。

 8月に入り、町内の感染判明は18日現在で3人と多くはないが、県内では急拡大。フェスには感染爆発状態の首都圏からの客も多いとみられ、地元の医療関係者の思いも複雑だ。

 魚沼基幹病院の鈴木栄一院長は「この地域の観光産業にとって開催が重要なことは承知している」とした上で、「大勢の人が来る以上はリスクをゼロにはできない。フジロックが無くても感染者病床はぎりぎりの状態。余裕を持っておきたい立場としては、当然心配はある」と話す。

 町は開催に向け、フジロックに関連する事業者をはじめとした町内就労者にワクチンを接種。宿泊施設などを対象に町独自の感染防止対策認証制度も始めた。

 田村正幸町長は「開催を巡って賛否両論のジレンマはある」と明かした上で、「それでも対策を講じて主催者がやると決めた以上、無事に終えられるように町としてもできることをやりたい」としている。