感染禍の中、開幕したフジロックフェスティバル=20日、湯沢町三国
感染禍の中、開幕したフジロックフェスティバル=20日、湯沢町三国
地面に付けられた印に沿って座る来場者=20日、湯沢町の苗場スキー場
トイレ前に設置された消毒液。会場のあちこちで対策が取られていた=20日、湯沢町三国

 国内最大級の野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」が20日、新潟県湯沢町三国の苗場スキー場で開幕した。2年ぶりの開催。新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、観客数を大幅に減らし、出演者を国内に限定するなど異例の厳戒態勢で始まった。

 20日は約1万人が来場。早朝から県内外の音楽ファンが詰めかけ、入場ゲートで検温、消毒や個人情報の確認を行った。入り口付近で長い列ができる場面も見られたが、大きな混乱はなかった。

 フェスの最中も人と人の間隔を開けるといった対策が呼び掛けられたが、ファンが密になる場面もあった。

 例年は延べ10万人以上が来場するが、主催者は22日までの3日間で延べ4万人前後の来場を見込む。

◆感染禍、複雑な思い抱え

 新型コロナウイルスの感染急拡大で実施に賛否両論がある中、湯沢町で20日開幕したフジロックフェスティバル。全国各地の音楽フェスが中止されたのに対し、主催者は感染対策を徹底するとして、開催に踏み切った。対策は効果を上げているのか、来場者の思いは-。現場を歩き、探った。

 20日早朝、車で会場に向かう途中、JR越後湯沢駅に寄った。地元の懸念は首都圏をはじめ全国から人が集まること。7時半過ぎ、早くも会場行きのシャトルバスを待つ長い列ができ、大勢の来県がうかがえた。

 感染拡大をどう防ぐかは難題だ。主催者は、来場客に事前に抗原検査キットを郵送。記者も検査キットを20日朝に使用し、陰性を確認して臨んだ。だが、会場で話を聞いた来場者の中には「来場2日前に陰性を確認した」という人もいた。来場直前の検査徹底への呼び掛けが課題と感じた。

 ことしは場内の飲酒と酒類持ち込みが禁じられている。ただ入場時の荷物検査はバッグの中身を空けて見せる簡易なもの。奥底に詰めるなどすればすり抜けられるようにも思えた。

 午前10時ごろ、本格的に出演者の演奏が始まった。ステージ前の地面には約1メートルほどの間隔で目印がある。観客はその上に立って動かずに腕を上げたり、体を揺らしたりした。

 声を上げる人はほとんどいない。東京都から訪れた会社員男性(35)は「正直物足りなさはあるが、声を上げずに楽しむというのも、また違った一体感があった」と語る。複雑な思いを抱え来場した人も。神奈川県から家族3人で来た男性(39)は「ぎりぎりまで迷った。でも、この機会を逃したら当面こうしたイベントが無いかもと思った」と明かした。

 出演者も慎重に言葉を選んでいるようだった。「ドレスコーズ」のボーカル、志磨遼平さんは「みんな悩んで悩んでここに集まったと思う。まずは健やかでいてほしい」と話した。

 出店には例年と変化が見られた。手洗い専用のブースを出した「花王」の松本彰さん(57)は「感染禍だからこそ少しでも衛生面で貢献したいと初めて出店した」と話した。多くの人がブースを訪れて入念に手を洗っていた。

 地元関係者は閉幕までの無事を祈る。浅貝町内会顧問の師田富士男さん(70)は「主催者でなく、地元側が最後に『無事に終わった』と言えて初めて成功だろう」と見守る。

 場内で大半の人はルールを守っていたように見えた。だが、マスクを外して写真を撮る人やステージから離れて椅子で見ている人の中には、密をつくり出している人もいた。最後は一人一人のマナーに委ねられる対策に限界も感じられた。