三条市の有形民俗文化財に指定された中浦歌舞伎の企画展=三条市歴史民俗産業資料館
三条市の有形民俗文化財に指定された中浦歌舞伎の企画展=三条市歴史民俗産業資料館

 新潟県三条市の地歌舞伎「中浦歌舞伎」の資料が市指定有形民俗文化財となったことを記念し、同市本町3の市歴史民俗産業資料館で企画展「中浦歌舞伎の世界」が29日まで開かれている。集落で伝えられてきた壮麗な衣装や台本、奉納額などを展示。市文化財係の勝山百合さん(47)は「当時のにぎわいや、中浦歌舞伎がどれだけ地域の人々に愛された芸能であったかを多くの人に知ってもらい、後世へも伝えていけたら」と期待した。

 中浦歌舞伎は江戸後期に中浦集落(下田地区)の住人が上方参りの時に見た歌舞伎に魅了され、地元で若者を集めて上演したのが始まりといわれる。最盛期は明治中頃で、村松や加茂、栃尾など20集落以上で巡業した記録が残る。警察の取り締まりや太平洋戦争などで中断と復活を繰り返しながら200年近く続いたが、テレビの普及や過疎化など時代の変化を受け1995年、中浦小学校の文化祭での上演を最後に途絶えた。

 市は2018年度、地域の貴重な伝統芸能を伝承していこうと、民家などに保管されている衣装や道具など関連資料の調査に本格着手。ことし6月末、確認された資料158点を有形民俗文化財に指定した。

 企画展では文化財指定資料の約半数を展示。最盛期の1893(明治26)年に地元神社に奉納された、20人もの役者名が書かれた額や、中浦集落から一座に贈られた引き幕などは、歌舞伎が地元の誇りだったことを伝えている。

 火災などに備え、衣装や道具、台本などをいくつかの民家に分散保管していた木箱も展示。勝山さんは「上演が途絶えないための工夫。地域にとって歌舞伎が大切な存在だったことを示している」と解説する。

 市文化財指定後に見つかった「一谷嫩(いちのたにふたば)軍記」で着用していた鎧(よろい)や小道具の生首も初公開した。生首はよく見ると、塗り直して新しい顔を描いたことが分かり、長く使われてきたことを伝えている。三番叟(さんばそう)のやり方を細かく記した「中浦芝居稽古本三番之部」(1917年)は、筆者の2代岩井成之助が亡くなる2カ月前に書き上げたもの。勝山さんは「自分が死ぬとやり方が分からなくなると思ったのでは。この芸能を守っていくという、強い思いを感じる」と語った。