移住者向け住宅の候補となっている空き家の前に立つ菊池高根さん。「集落が関わることで活用を進めたい」と話す=佐渡市松ケ崎
移住者向け住宅の候補となっている空き家の前に立つ菊池高根さん。「集落が関わることで活用を進めたい」と話す=佐渡市松ケ崎

 人口減少に伴う空き家の増加が深刻な新潟県佐渡市で、新たな空き家対策が本年度始まった。集落から推薦された空き家を、移住希望者が安価に短期間借りられる「お試し住宅」として市が整備する。先行する3集落では、既に候補の空き家を選定。空き家活用を進めて景観や防犯上の問題を解消するとともに、集落の活性化にもつなげようとしている。(佐渡総局・佐藤千尋)

 かつて北前船の寄港地として栄えた佐渡市の松ケ崎集落。2階部分の天井が低い造りが特徴的な家並みを、住民たちが残してきた。

 だが、集落約90軒のうち約50軒は空き家となっている。松ケ崎街並み検討委員会の副委員長、菊池高根さん(58)は「ここも、向かいも空き家」と通りを見渡し、「今、手を打たなければ、間に合わない」と危機感を口にした。

■    ■

 集落では空き家の増加を懸念し、6年ほど前に空き家の家主を対象にアンケートを実施。「活用方法があれば協力したい」という意向を把握していた。しかし、空き家の多くは利用前に改修が必要になる。費用をどう捻出するかがネックとなっていた。

 取り組みが停滞していた本年度、市の新たな空き家対策が始まった。従来、市営住宅などを改修し、移住希望者に最長半年間貸し出していた「お試し住宅」を、地域推薦の空き家を使って整備するという内容だ。

 集落は家主ら関係者と合意を形成した上で、お試し住宅向けの空き家を市に推薦する。移住者との交流にも関わる。市は空き家の改修費用を負担する。

 対策を知った菊池さんが中心となって集落と家主に諮り、6月には合意をまとめた。既に、ベランダから海が一望できる家族向けの物件を市に推薦し、市と調整を進めている。

 同時に、お試し住宅の使用期間を終えた移住希望者が、佐渡で家を探す際をにらんだ検討も始めた。集落と家主で協議を進めて別の空き家も貸し出せるように改修し、松ケ崎に定着できる環境を整えたいとする。

 菊池さんは「市の予算があるから一歩を踏み出せた。集落でもできることを精いっぱいして、空き家活用のいい見本をつくりたい」と力を込める。

■    ■

 市内では、ほかに新穂潟上、宿根木の両集落も手を挙げている。

 稲作、柿栽培などが盛んな新穂潟上集落は、付近に農業の研修施設もある。就農を希望する移住者に働き掛けることも視野に入れる。宿根木集落は、港町の面影を残し、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選ばれたエリアにある空き家を推薦する考えだ。

 市移住交流推進課の渡邉一哉課長は「集落の情報や人脈など、行政と異なる力が加わったことで、空き家活用の取り組みがスムーズに進んでいる」と、集落との協働の効果を説明。移住希望者にとっても、さまざまな特徴を持つ集落・住居を選べたり、受け入れに前向きな集落で住むことができたりと、メリットがあるとする。

 市は本年度中に整備を終え、新年度には入居を受け入れる予定。新年度も希望する集落を募る方針だ。