緊急事態宣言の対象地域を小刻みに広げるような対応を繰り返すばかりでは国民にリーダーの危機感は伝わるまい。感染拡大に歯止めをかけるという決意も見えてこない。

 宣言の対象を追加しながら、「明かりが見えてきた」とした菅義偉首相の発言に違和感を覚えた人は多いのではないか。

 急拡大している新型コロナウイルス感染を巡り、政府は北海道、宮城など8道県を27日に緊急事態宣言の対象地域に追加する。いずれもまん延防止等重点措置から格上げされる。

 宣言は計21都道府県に上り、全人口の約75%が対象になる。

 重点措置は高知県など4県が加わり計12県となる。

 本県など14県は対象外だ。

 政府は7月に東京都に対して4度目の宣言を出したが、対象地域は8月に入って拡大を重ね、今回で3回目となった。

 首相は25日の記者会見で、全国で経験のない感染拡大が継続していると分析した。「この危機を乗り越えるのが私に課せられた責任だ」と述べたが、国民の胸には響いただろうか。

 感染は本県を含む43都道府県で人口10万人当たりの直近1週間の感染者数がステージ4(爆発的感染拡大)相当となり、過去最大水準を更新している。

 そうした中で宣言地域を都度広げる政府対応には全国知事会から「効果を見いだせないことが明白」と批判が出ていた。

 2回目の対象地域拡大を決める協議では閣僚から全国への発令案も提起されていた。今回も自治体から全国一斉発令を求める声が上がっていた。

 しかし政府の対応はまたも小出しだった。地方の危機感はきちんと伝わっているのか。

 会見で首相はワクチンについて9月末には国民の6割近くに接種をし「イギリスやアメリカ並みに近づく」と展望した。

 だが現状は接種が進んでいない若い世代の感染が目立ち、病床不足で自宅療養を余儀なくされる人も多い。療養中に亡くなるケースも相次いでいる。

 米モデルナ製ワクチンで未使用状態の瓶から異物の混入が見つかるトラブルもあった。

 政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は25日の衆院厚生労働委員会で感染に関する政府対応に対し「専門家の分析より、やや楽観的な状況分析をされた」と苦言を呈した。

 医療提供体制が全国的に厳しく、「災害時の状況に近い局面だ」と訴える専門家は多い。

 感染実態を踏まえれば、首相はこうした指摘を真摯(しんし)に受け止めて危機感が伝わるメッセージを国民に発するべきだろう。

 本県も過去最多の感染者が確認された。重点措置が適用されるぎりぎりの段階にある。判断が後手に回ってはならない。

 中等症患者が急増しており、花角英世知事は「通常医療に優先順位を考えざるを得ない場面が出る可能性がある」として県民に理解を求めている。

 本県も全く油断できない状況にある。警戒を緩めず、感染防止対策を徹底したい。