オーエックスエンジニアリングの競技用車いすで力走する樋口政幸選手(中央)=28日、東京都「国立競技場」
オーエックスエンジニアリングの競技用車いすで力走する樋口政幸選手(中央)=28日、東京都「国立競技場」

 「勝てる車いすをつくっている」。陸上やテニス、バスケットボールなどパラアスリートが乗る「競技用車いす」を開発・製造するオーエックスエンジニアリング(千葉県)の石井勝之社長(41)は、東京パラリンピックを目前に、自信をにじませていた。

 その言葉通り、今大会ではオーエックス製の車いすを駆る陸上男子400メートル(車いすT52)の佐藤友祈選手(31)=モリサワ=が金メダルを獲得。十日町市出身で同5000メートル(車いすT54)の樋口政幸選手(42)=プーマジャパン=は8位入賞を果たした。

 陸上の会場となっている国立競技場では、同社の製品であることを示す「OX」の文字が刻まれた車いすが散見される。乗り手は日本代表だけでなく、海外勢にも目立つ。

 世界のトップアスリートから支持を集める同社は元々、都内にあるオートバイショップだった。創業者はオートバイレーサーとしても活躍した石井社長の父、故重行氏。オートバイの事故で車いす生活になったことがきっかけで1992年、日常用車いす事業に乗り出した。

 当時の車いすは、福祉用具としての側面が強く、重くて飾り気のないものがほとんどだった。「かっこいい車いすに乗りたい」。重行氏はオートバイのカスタムパーツ製造で培った技術を駆使し、デザインや機能性にこだわった“かっこいい”車いすを生み出した。

 競技用車いす事業への参入は、長年オートバイの世界に身を置いていた同社にとって自然な流れだった。「レースに勝てば、自社製品が売れる」。車いす業界で後発だった会社の命運を、勝負の世界に委ねた。

 パラリンピックに初めて挑戦した96年アトランタ大会以降、使用選手がこれまでに獲得したメダルは計120個を超える。世に名を知らしめようとも、結果に甘んじることなく、素材や構造の研究に情熱を注ぎ、技術を磨き続けた。

 今大会に挑んでいる同社の車いすには、日常用車いすの製造拠点である子会社のオーエックス新潟(長岡市)で加工された部品も多く採用されている。技術者たちは小さな部品一つ一つに、「選手が勝つ姿を見たい」と願いを込めていた。熱戦を繰り広げるアスリートたちの活躍を祈りながら、技術者たちの魂の結晶とも言える車いすにも熱視線を送っている。

(報道部・森田雅之)