デジタル化の進展によって世界で半導体の争奪戦が繰り広げられている。日本は自国の強みを生かした戦略で安定確保につなげるとともに、半導体事業の再構築を図るべきだ。

 政府は半導体の開発や生産体制の強化に向けて「半導体戦略」を策定した。経済安全保障の観点から、半導体など産業基盤の確保に国家事業として取り組み、海外メーカーと連携して国内での製造能力を強化する。

 半導体は自動車や家電などさまざまな工業製品に使われる。近年は人工知能(AI)や自動車の自動運転などハイテク技術の加速で世界中で需要が急増している。このため、半導体不足は深刻な問題になっている。

 影響は日本にも及び、自動車業界では部品が調達できない状態が長期化している。

 7月にはマツダが初めて国内工場を一時停止し、日産自動車も生産を減らした。トヨタ自動車は新型コロナウイルスの影響もあり、国内を含む9月の世界生産台数を計画比で4割縮小するという。

 背景には、世界の半導体市場で日本のシェアが10%程度と低いことがある。

 1980年代まで日本は世界の半導体産業をけん引、88年には50%以上のシェアがあった。だが、90年代以降は価格競争や円高などで地位が低下した。

 先端技術を巡る米中の覇権争いの焦点でもある半導体の生産強化は、国際的な重要課題だ。

 米国は半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)誘致のため巨額の補助金を投入するほか、中国は10兆円規模の政府資金を投じて国産化を進める。

 こうした中で、TSMCが日本国内での製造工場の建設を検討していることがこのほど明らかになった。誘致には政府が動いているとされる。

 ただ、進出には数千億円の補助金が必要になる可能性があるという。

 生産拠点の新設や誘致にかかる資金を日本が負担するのも限度があろう。世界中で生産拠点が増えれば、供給過剰による採算割れにも陥りかねない。

 必要なのは日本の強みを生かすことだろう。注目したいのは、日本では半導体の製造装置や液状樹脂といった原材料の世界シェアは高いということだ。

 本県でも上越市で信越化学工業の液状樹脂の生産拠点を建設する工事が進んでいる。ナミックス(新潟市北区)の導電・絶縁材料は30%を超える世界シェアがある。

 懸念されるのは、製造装置産業や原材料産業が海外に移転してしまうことだ。

 官民を挙げて国際協業・分業体制を構築して主導権を握り、日本の半導体産業の再生を図るべきだ。国際協業・分業が進めば、工場がある地域の経済にもプラスになる。

 半導体事業ではかつて、反転攻勢を目指し国主導による業界再編が行われながら不発に終わった苦い経験がある。政府には同じ轍(てつ)を踏まぬよう万全の対応を望みたい。