芋虫のように床をはってトライを目指す。年齢や性別、運動能力にかかわらず楽しめるよう考案された「ゆるスポーツ」の種目「イモムシラグビー」だ

▼車いす利用者は家の中では車いすから降りて床をはって移動することが多い。この種目では車いす利用者が俊敏な動きを見せることがある。一般社会では“弱さ”と捉えられがちな個性を生かせるように、と誕生したのが「ゆるスポーツ」だ。合言葉は「勝ったらうれしい、負けても楽しい」である

▼先日まで開かれたパラリンピックでは、ハンディを乗り越え人間の能力の限界に挑戦するアスリートの姿が多くの人の心を動かした。ただ、競技の場で活躍するのは健常者のスポーツと同様に強くて速くてうまい選手だ。誰もがそうした高みを目指せるとは限らない

▼健常者の中にも、運動が苦手という人は多い。「ゆるスポーツ」は運動神経に自信がなくても、障害があっても楽しめる。先ごろの本紙に、この分野を開拓したコピーライターの沢田智洋さんが紹介されていた

▼これはレクリエーションであって、スポーツではない…そんな見方をされることもあるという。しかし「プレーする」という言葉に象徴されるように、スポーツの原点が「楽しむこと」であるとすれば、これは立派なスポーツだ

▼健常者を中心に構築された社会を、障害者に乗り越えさせるのではなく、マイノリティーの視点から変えていく。そして、弱さを生かせる社会に-。記事中の、沢田さんの訴えである。