東京五輪に出場した先輩の活躍に刺激を受け、練習に励む白根柔道連盟鳳雛塾の子どもたち=新潟市南区
東京五輪に出場した先輩の活躍に刺激を受け、練習に励む白根柔道連盟鳳雛塾の子どもたち=新潟市南区

 新潟市南区の柔道場。東京五輪の混合団体で銀メダルを取った向翔一郎選手(25)=ALSOK・白根小出=が通った白根柔道連盟鳳雛(ほうすう)塾の小中学生が練習に励む。

 子どもたちは向選手の試合をテレビ観戦し、声援を送った。「自分も五輪に出たい」「金メダルを取りたい」-。保育園児の男児(5)と白根小3年の男子児童(9)は目を輝かせた。

 身近な選手の活躍は後輩の刺激になった。塾代表の星野力さん(52)は「子どもたちはきつい練習でも頑張ろうという気持ちが湧き、モチベーションも高くなっている」と目を細める。

 東京五輪でメダルを量産した日本柔道。ただ、県柔道連盟によると、中学校の柔道部設置校が減っているほか、県内小中学生の連盟への登録者数は1252人と、10年前から600人近く減少するなど現状は厳しい。

 少子化の上に、多くの新スポーツが登場。東京大会では正式競技になったスケートボードなども人気になりそうだ。星野さんは五輪を契機に柔道人口が増えることを期待するが、そう簡単ではないとし、「メダリストの素晴らしい立ち振る舞いを見て、柔道の良さを感じた子が1人でも多く増えてくれたらうれしい」と語る。

 また、指導歴30年近くになる星野さんには気掛かりなことがある。子どもたちの運動能力の変化だ。昔より、小さい子で前転や側転を上手にできる子が少なくなっているという。

 かつては空き地も多く、外遊びから興味を持ったスポーツを始めるケースがあった。しかし、安全な遊び場が減ったほか、保護者もけがなどのリスクを避ける傾向があるという。「子どもたちの遊ぶ機会が失われている」と星野さんは危惧する。

 運動をする子としない子の二極化が進んでいることも課題だ。2019年度のスポーツ庁の調査では、部活動が本格化する中学生で、1週間の総運動時間が60分未満の生徒は男女で1~2割なのに対し、1日1時間に相当する週420分以上の割合が6~8割だった。

 体を動かす機会や場所の確保が難しくなる中、どのように子どもたちにスポーツの楽しさを伝えるのか。県スポーツ協会が着目したのが園児だ。幼少期から運動に親しんでもらおうと、協会は楽しく体を動かす「運動遊び」の普及啓発に力を入れる。鬼ごっこや体じゃんけん、手押し相撲など内容は多彩だ。

 協会スポーツ推進課の渋谷健一課長(53)は「気軽に運動を楽しみ、そこから何かに挑戦したいというきっかけづくりになる」と狙いを語る。運動遊びを各地の保育現場で広げてもらうため、18年度から、保育士らを対象に研修会を重ねている。

 新型コロナウイルスの影響で、子どもの運動不足も心配だ。協会は指導者育成に加え、運動遊びの体験イベントも開催。東京五輪に出場した選手を招き、トップアスリートとの触れ合いを通じ、子どもたちにスポーツの楽しさを伝える構想もある。

 五輪やパラリンピックを通じ、どうスポーツに親しんでもらうのか。渋谷課長は「今がチャンス。子どもたちには場所と時間、仲間といった環境が必要なので、大人はスポーツと出合う機会をつくってほしい」と呼び掛けた。(この連載は本社取材班・河野雄也、布川舞子、細山謙治が担当しました)