新型コロナウイルスの感染拡大「第5波」が襲い、県独自の特別警報が全県に発令されてから約2週間が経過した。感染対策は県や自治体、民間によってさまざまだ。大型音楽イベントが開催される一方、学校の部活動が休止されるなど、県民からは「制限の線引きが分かりづらい」と困惑の声が漏れる。厳しい制限と私権への配慮が矛盾しかねない感染対策にどう対応すべきか、社会心理や災害情報論が専門の関谷直也東京大大学院准教授(46)に聞いた。(報道部・三浦穂積)

 -県立施設が休館する一方、民間の大型イベントは休止対象にはなっていません。県民からは一貫性がないとの不満も聞かれます。

 「行政の対応には二つの側面がある。施設や学校の運営者の立場と、民間の活動に協力を求める立場だ。前者は自らが運営する場所で感染は広げられず、休館や休止は妥当だろう。一方、後者は経済活動を制限することになる。日本では強力な私権制限はできないのが現状で、イベント主催者などにできる限りの対策を求めるやり方になる」

 -市民には困惑もあります。

 「受け手にとっては矛盾したメッセージになっている。子どもに遊んでいいよと言いながら、同時に遊ぶなと言っているようなもの。ダブルバインド(二重拘束)と呼ばれる状態で、言われた側はどうしたらいいか分からなくなってしまう。だからこそ行政はただ協力を求めるだけでなく、一つ一つの対策の理由を丁寧に説明する必要がある」

 -県が県立高校の部活動休止を決めた後、市町村では小中学校も休止するか対応が分かれました。

 「学校の対策は全国でばらばら。関西はオンライン授業が基本だが、首都圏は登校を前提にしている。首都圏などに比べ感染が抑えられている新潟の状況に照らすと、部活動休止は厳しい対応に映る。ただ、これまで首都圏に遅れて感染が広がった経験則から考えると、予防的に対応することは間違ってはいない」

 -個々の対応が妥当でも、統一感がないと不公平感や分断が生じかねません。

 「県土の広い新潟では、感染の広がりが一様でない。感染者が少ない地域で、多い地域と同じ厳しい対策をしても不満は生まれる」

 「地域によって特徴も異なる。例えば、若者の飲食店クラスターが頻発した福島県は、ワクチン接種を高齢層ではなく、若い世代から順に進めている。観光が主産業の沖縄県は観光客中心の感染対策を取った」

 -民間の対策もさまざまです。飲食店の中には「県外客お断り」の表示を掲げる店もあります。

 「県をまたぐ移動自体にリスクがある。自分が気を付けても、ウイルスを運んでしまう可能性がある。これは差別ではなく事実。県外客を入れての飲食はリスクが高く、店側の対応には理由があり、理解できる。一方、昨年、休業しないパチンコ店が批判されたが、パチンコ店内では客があまり話さない。結果的に大きなクラスターは発生せず、典型的な差別だった」

 -政府は9日に行動規制緩和の基本方針を示しました。

 「(感染が収まっていない)今出すと、対策を緩める誤ったメッセージになる。出口戦略の検討は必要だが、発信はまだ早い。行政による情報の出し方やタイミングは非常に重要だ」

 -混乱を招かないために必要なことはありますか。

 「状況は今後も変わりうると受け止めることだ。変異株の教訓は大きい。マスクを着用し、距離を取って防ぐという当初の対策は、変異株になると必ずしも効かなくなった。これが新型ウイルスの難しさで、気を緩められない」

◎関谷直也(せきや・なおや)1975年、新潟市生まれ。新潟高、慶応大卒。東大大学院博士課程満期退学。2018年から現職。著書に「災害情報-東日本大震災からの教訓」など。