新潟県の東京電力柏崎刈羽原発でテロなどを防ぐ核物質防護体制の不備が相次いだ問題を巡り、これを調査する原子力規制庁でも核防護に関わる失態が相次いで表面化した。テロ対策に関わる機密文書を紛失した上、2年にわたって対応を放置していた。さらに、原発に立ち入る際に必要な身分証を紛失していたことも明らかになった=図参照=。東電に改善を指導する側の規制庁が核防護体制のずさんさを露呈する事態に、原子力事業全般への信頼が揺らいでいる。
(東京支社・遠藤寛幸)

 8月25日に原子力規制委員会で行われた定例会合。同委の事務局に当たる規制庁は「機密性の高い文書の誤廃棄」があったと報告した。原発のテロ対策などを監視する同庁核セキュリティー部門で、機密文書の所在が確認できないという。

 規制庁によると、紛失した機密文書はテロ対策施設に関する審査官向けガイドのコピー。核セキュリティー部門の職員が2015年~16年ごろ、審査部門から借り受けたものだ。

 核セキュリティー部門の職員に閲覧権限はない。審査部門の職員は貸し出す際に、文書を管理する技術基盤課や上司に確認する必要があったが、無許可で「また貸し」をしていた。

 失態はさらに続く。庁内では18年8月ごろに紛失の可能性に気付いた。だが、幹部への報告は20年6月までなされなかった。


 ◎消えた機密文書

 紛失した機密文書はどこへ消えたのか。外部に流出していないのか。

 規制庁は「核セキュリティー部門から文書を持ち出さない運用にしている」との理由で誤廃棄されたと推定する。しかし、職員が故意に持ち出す恐れはないのかなど疑念は残る。

 同じ会合では、核物質の管理状況の検査で原発などに入る際に必要な身分証3人分を14~19年にかけて紛失していたことも明らかになった。3人とも異動に伴って郵送などで返却したと主張しているが、所在不明になった。20年7月になって判明したという。

 規制庁がこの二つを上部機関である規制委に報告したのは年度末の21年3月。年1回の定期報告だった。具体的な中身の説明は同8月にまでずれこんだ。

 折しも、柏崎刈羽原発での東電のずさんなテロ対策に厳しい視線が向けられているさなか。委員は「こういう重要な案件はタイムリーに報告してほしい」と苦り切る。規制庁は事案によって即座に報告する仕組みを検討している。


 ◎規制委員長も苦言

 規制庁を巡っては、東電社員が他人のIDカードで不正に原発中枢へ入った事案を「軽微な案件」と処理。20年9月に把握していたにもかかわらず、規制委への報告が約4カ月遅れ、批判を受けた経緯がある。

 度重なる失態に規制委の更田豊志委員長は立つ瀬がない。「(機密性が求められる)核セキュリティー関連だからといって説明責任を回避してはならない」と規制庁に苦言を呈する。

 規制委は現在、東電の核物質防護体制の不備に関する追加検査を行っている。規制庁はその実務を担う。

 規制当局への疑念が生じるのではないか-。8日の定例記者会見でこう問われた更田氏は困惑した表情で答えた。「職員の意識に問題はないか心配している。改善されるべきは東電だけでなく、規制庁や規制委も同じだ」