工房の運営や医療通訳など、さまざまな活動をしている渡辺麻恵さん(左端)=バングラデシュ(渡辺さん提供)
工房の運営や医療通訳など、さまざまな活動をしている渡辺麻恵さん(左端)=バングラデシュ(渡辺さん提供)
新潟商工会議所中央会館(当時)を警察署に見立てた映画「チェイン」の撮影で、高校教諭役を演じる渡辺麻恵さん(前列右から3人目)=2012年、新潟市中央区

 新型コロナウイルス禍で日本で暮らす外国人にも感染が広がっている。新潟市など本県にゆかりがあり、バングラデシュで女優業をしつつ貧困女性の支援活動をしている渡辺麻恵(まえ)さん(41)は、現地と日本を電話でつなぎ、同国の公用語のベンガル語で医療通訳として活動している。

 渡辺さんは東京出身で、旧姓の「大塚麻恵」の名で映画などに出演してきた。新潟市中央区や長岡市で2012年に撮影したサスペンス映画「チェイン」(細井尊人(たかと)監督=新潟市中央区出身=。14年公開)は代表的な出演作の一つだ。警察署という設定の中央区の新潟商工会議所中央会館(当時)などで高校教諭役を演じた。

 バングラデシュの貧困層の支援活動に携わったきっかけは、日本に暮らしていたバングラデシュ人と知人になり、現地の様子に心を痛めたことだ。

 12年に移住した。女優業の傍ら、貧困の中で子育てをする女性の経済的、精神的な自立に向けた支援のため、ペンやポーチを製作する工房を運営。ベンガル語の翻訳や通訳の仕事もしている。

 その一環で、日本で生活するバングラデシュ出身者が医療機関を受診する際の医療通訳の仕事も始めた。日本と電話でつなぎ、3者同時通話により患者と病院側とのコミュニケーションを助ける。

 専門用語はパソコンの翻訳機能を使って対応するなどノウハウを積んできた。深刻な病状や余命宣告の通訳をしなければならないこともあるが、「患者を安心させるのが自分の役割」と考えて仕事をしてきた。

 最近は、新型ウイルスに感染したバングラデシュ出身の患者の問い合わせを受けることが増えている。個人情報の守秘義務があり、細かい件数や相談内容は明かせないが、問い合わせは「毎日のようにある」と渡辺さん。隔離や治療に関するものが多い。

 医療通訳の仕事を通じ「命に限りがあることをどう受け入れるか、限りある今をどう生きるかという大事なことがいつも心にあるようになった」と話す。感染下でのサポートに関わる仕事が増える中、「これからも患者さんの心に寄り添い、生命の尊さを医療通訳を通じて見つめていきたい」と考えている。

(報道部・黒島亮)