記者会見に臨む東京電力の小林喜光会長(中央)と小早川智明社長(右)=22日、東京・内幸町(東電提供)
記者会見に臨む東京電力の小林喜光会長(中央)と小早川智明社長(右)=22日、東京・内幸町(東電提供)

 新潟県の東京電力柏崎刈羽原発でテロなどを防ぐ核物質防護体制の不備が相次いだ問題で、東電は22日、原因究明や再発防止に関する報告書を原子力規制委員会に提出した。「原子力部門全体で核セキュリティーに対する意識の低さがあった」と総括し、特に同原発では核物質防護部門の風通しの悪さがあったとした。東電は抜本的改善に向け、東京本社の原子力部門を県内に移転させると発表した。

 規制委は今後、報告書の内容を確認し、2千時間分の本格的な検査を始める。全ての検査の終了には、4月から起算して1年以上かかる見通し。検査の結果、「自律的な改善が見込める状態」と判断されるまで、柏崎刈羽原発は再稼働できない。

 東電の小林喜光会長は同日開いた記者会見で一連の問題を陳謝。「是正措置をやり遂げることができなければ、原子力事業に携わる資格がないとの烙印(らくいん)を押される。最後の機会を与えられたとの覚悟を持って取り組んでいく」と述べた。

 規制委や東電によると、同原発では2020年3月以降、複数箇所で侵入検知設備が機能を失っていた。20年9月には運転員が同僚のIDカードを使って中央制御室に不正入室した。

 報告書によると16年以降、核防護設備を外部委託業者から買い取るなど自社設備に切り替えたことで、故障時の復旧に長期間かかることが増えていた。福島第1原発事故後の経営状況を踏まえた変更としている。

 会見で、背景に経費削減があったのではと問われた小早川智明社長は「安全、品質をないがしろにしてコストカットせよと指示したことは一切ない」と答えた。

 報告書では、柏崎刈羽原発の防護管理グループに、侵入検知設備が故障しても監視カメラなどの代替措置で十分という共通認識があったことを指摘。規制当局から改善につながる指摘もあったが、生かされなかったことも明かされた。

 不正入室を許した要因については「社員は内部脅威になり得ないという思い込みがあった」と分析した。

 改善策として、核物質防護規定を見直すほか、本社原子力・立地本部の一部を年度内にも本県に移し、柏崎刈羽原発の運営をサポートすることなどを挙げた。

 同原発の核物質防護不備を巡り、規制委は3月、安全重要度を4段階のうちで最悪レベルと評価。4月、核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出すとともに専任チームによる検査を始めた。

◆小早川社長ら報酬30%減、石井所長は辞任

 東京電力柏崎刈羽原発で核物質防護体制の不備が相次いだ問題で、東電は22日、経営責任を明確にするためとして、小早川智明社長と、原子力部門のトップである原子力・立地本部長の牧野茂徳常務の月額報酬をそれぞれ3カ月間、30%減額とする処分を発表した。

 同時に、牧野常務の取締役辞任、原子力・立地本部長退任と、同原発の石井武生所長の辞任も発表した。いずれも9月30日付。事実上の更迭とみられる。

 同原発の新所長には、原子力改革担当の稲垣武之常務執行役(58)が10月1日付で就任する。稲垣氏は、原子力・立地本部長も兼ねる。

 稲垣氏は東京都出身。横浜国立大卒。原子力・立地本部副本部長などを経て、20年8月から原子力改革担当。

動画