事実上の次期首相となる自民党の新総裁に求められるのは、新型コロナウイルス感染をしっかりと収束に導く手腕だ。総裁選で票を投じる党員・党友だけでなく、国民が広く注目しているに違いない。

 この課題に総裁候補の4氏はどう向き合い、対策を講じるのか。国民の不安に応えるためにも、4氏には総裁選で丁寧に議論を戦わせてもらいたい。

 爆発的に感染が広がった「第5波」による感染者数は全国的に減少傾向にあり、政府は19都道府県に発令中の緊急事態宣言を総裁選翌日の30日で解除する方向で検討を始めている。

 第5波で深刻だったのは医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し、多くの人が入院できずに自宅療養を余儀なくされたことだ。

 首都圏などに比べ感染が抑えられた本県でも自宅療養者は8月末に最大860人に達した。

 厚生労働省によると全国では今月15日時点でなお6万人強が自宅療養を求められており、病床不足は解消していない。

 こうした中で、総裁選では政府などの影響力を強めて医療を確保する考えが示されている。

 河野太郎行政改革担当相は病床確保などに「もう少し権限を使ったことをせざるを得ない」とし、自衛隊による臨時病院の設置などを主張している。

 高市早苗前総務相は医療機関に病床確保を命令する権限を国や自治体に持たせる法案を国会に提出する考えで、「一定の罰則を設ける」と強調する。

 だが強い権限を使って命令すれば逼迫は解消されるのか。

 政府は2月に感染症法を改正し、正当な理由がなく病床確保要請に応じない医療機関の名前を公表できるようにしたが、人材不足で要請に応じられないとする医療機関は多い。

 圧力で言うことを聞かせるより、医療現場の事情をくみ取った丁寧な対策が不可欠だ。

 第5波では爆発的な感染拡大を抑える対策も課題となった。

 これについて全国知事会は総裁選候補者への政策提言で、人流を抑えるためのロックダウン(都市封鎖)のような手法を早期検討するよう求めている。

 ロックダウンを巡っては、菅義偉首相は「日本になじまない」と重ねて否定してきた。

 総裁選では河野、高市両氏が可能にする法整備の必要性を認め、岸田文雄前政調会長も法整備について「将来的に必要だ。今やるべきは人流抑制の協力に見合う経済対策だ」と訴える。

 一方、野田聖子幹事長代行はロックダウンや命令権の法整備は不要だと明言している。

 私権制限を強めることにつながるロックダウンの導入には慎重な議論が欠かせない。

 ただ知事会の提案の背景には、政府の危機感が国民に伝わらず感染拡大が抑えられなかったことへの不満があるはずだ。

 菅首相は発信力の欠如を指摘されてきた。ウイルス禍を乗り越えるためには国民にどうメッセージを発信するべきか。候補者にはそうした点もしっかりと考えてもらいたい。