本紙「うぶ声」「おくやみ」欄に載る名前は究極のニュースだろう。政治やスポーツも大切だ。でも誕生や逝去は生涯で一度きり。それを報じることは、新聞の大切な使命といえる

▼〈朝刊のうぶ声の数多い日はキラキラネームも楽しく読めり〉坂田和夫。うぶ声欄には人生デビューを飾った名前が競うように並ぶ。読み仮名を見ないようにして試し読みしてみた。恥ずかしながら正解できたのは半分ほど。国語力以上に豊かな想像力が必要だ。「そうか、なるほど」。先の一首のように、親心に感じ入る名前も多い

▼人名用の漢字は約3千あるが、読み方は原則自由。個性的な「キラキラネーム」が近年増え、本紙では2009年2月5日付の上越版を皮切りに読み仮名を付けている

▼「寺内貫太郎一家」の脚本家、向田邦子さん宅には変わった“生け花”があった。ガラス瓶に長細い画用紙が数本挿さっている。イワ、タメ、サブ、ロク、テツ…。花代わりに名前が書いてあり、1本ずつ引いては登場人物の呼び名に当てていたという

▼テレビドラマが放送される半年間だけの命であっても、登場人物の境遇や年齢にふさわしい名前を。エッセー「名附(づ)け親」に、多作の作家ならではの苦心や心遣いを書いている

▼上川陽子法相が戸籍の氏名に読み仮名を付ける検討を法制審議会に諮問した。漢字本来と異なる読み方をどこまで許容するかも議論する。親から子への最初の贈り物は名前だろう。そこに込められた思いを大切にできたらいい。