地位にふさわしくない振る舞いにバッシングと言えるほどの批判が集まったが、大相撲はこの人に大きな借りがある。引退を決めた横綱、白鵬である

▼2011年、力士が金銭で星を売買する八百長行為が報じられ、大相撲の威信は地に落ちた。前年には野球賭博問題も持ち上がっており、存亡の危機に陥った。11年の春場所は中止され、5月場所は本場所ではなく「技量審査場所」として開催したものの、長年のファンが離れる兆しも見えていた

▼そんな危機に、ただ一人の横綱として土俵を支えたのが白鵬だった。世間からは厳しい視線が注がれる中、技量審査場所では途中で右膝を痛めながらも優勝し、7連覇の偉業を成し遂げた

▼相撲は日本の国技。その頂点である大相撲の失墜を、瀬戸際で食い止めたのはモンゴル生まれで当時26歳の青年だった。外国出身の横綱として、どれほどの重圧の中で土俵に上がっていたのか。その後も白星を積み重ね、大横綱として大相撲人気復活へとつなげていった。今の大相撲の隆盛は、その姿を抜きに考えることはできない

▼角界の最高峰の立場として、眉をひそめるような言動が度々あったことは確かである。ただ、そうした問題は外国出身ならではの気負いや不安に端を発した部分もあっただろう。ならば、責められるべきは本人だけでないはずだ

▼綱の品格うんぬんはともかく、特筆すべきは勝負に対するこだわりである。その精神は本県出身の豊山ら全ての力士のお手本であるに違いない。