台頭する中国への対抗連合の色合いが強くなりすぎれば、アジア地域の緊張を高めることになりかねない。

 主導する米国は「地域の安保機構ではない」としている。「自由で開かれたインド太平洋の安全と繁栄を強化する」との理念を尊重し、地域の安定・発展に尽くしてほしい。

 日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による枠組み「Quad(クアッド)」の初の対面での首脳会合が米ワシントンで開かれ、新たな連携分野と協力策を明記した共同声明を発表した。

 声明は半導体など重要技術の供給網強化、地球観測衛星のデータ共有など宇宙分野での協力拡大をうたい、新型コロナウイルスワクチン12億回分超を世界へ供与するとした。

 気候変動のモニタリング、違法漁業を含めた海洋に関する問題での情報共有を進め、4カ国の首脳、外相会合を毎年開く方針でも一致した。

 クアッドににじむのは覇権主義的な動きを強める中国への対抗意識だ。

 声明は「法の支配、航行の自由、紛争の平和的解決、民主的価値を支持」「国際法に根差し威圧にひるまず、ルールに基づく秩序を推進」として、名指しを避けながらも中国をけん制している。

 これに対し中国共産党系の新聞は社説で「インド太平洋のマフィアと化している」とクアッドを批判。外務省報道官も「中国の脅威を誇張し扇動している。断固反対だ」と反発した。

 米国は中国をにらんだ安全保障の枠組みとして、英豪と「AUKUS(オーカス)」創設を発表したばかりだ。

 ここでも中国は「軍備競争を激化させ、国際的な核不拡散の努力を損なう」と反発し、対立の火だねになっている。

 求めたいのは、米中双方の自制的な対応であり、融和に向けた努力だ。

 カナダで拘束され米国で起訴された中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)副会長兼最高財務責任者(CFO)孟晩舟被告を巡り先ごろ起訴効力を停止する司法取引が成立した。

 米中両国間の懸案事項の一つが解決した形だが、こうしたことを通し、摩擦の緩和につなげてほしい。

 近接する中国と歴史的、経済的結びつきが強く、衝突を避けたい日本はより丁寧で戦略的な外交のかじ取りが求められる。

 菅義偉首相は、ワシントンで開かれたバイデン大統領との首脳会談では「台湾海峡の平和と安定の重要性」に言及し、日米同盟重視の姿勢を強調した。

 次期首相は、日米同盟一辺倒ではなく、米中を軸に激変する国際秩序への柔軟な対応が必要だろう。

 日本はこれまで独自の外交努力を重ね、対中関係を深化させてきた。

 今後はクアッドのような多国間協力体制もてこに、平和国家ならではの外交展開につなげられるかが問われよう。