「第5波」は新規感染者も減少し、収束に向かいつつある。ただし油断すればすぐに再拡大しかねない状況だ。

 警戒を怠らず、基本的な感染防止対策を徹底する。そのことが日常や経済再生への近道になると一人一人が肝に銘じて行動したい。

 政府は19都道府県に発令している新型コロナウイルスの緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置を、30日の期限で全面解除する。

 4月4日以来、約半年ぶりに宣言と重点措置が全国のどこにも出ていない状況になる。苦境が続く飲食店や観光業をはじめ歓迎する人は多いだろう。

 本県でもこれまで、宣言発令地域との往来などが制限されてきた。今後、着実に収束に向かうことを願う。

 感染者数や重症者数が減り、病床使用率は全対象地域で「ステージ4(爆発的感染拡大)」に相当する50%を下回った。

 医療提供体制の逼迫(ひっぱく)状況は改善されてきてはいる。だが、対策を急に緩めれば、リバウンドし再び窮地に陥る恐れがある。

 政府は宣言解除後も、地域の感染状況に応じて段階的に対策を緩めるとしている。再拡大の兆候があれば逃さず、対策強化の手を打つことも重要だ。

 第5波が収束に向かった背景として指摘されるのはワクチン接種の進展だ。2回の接種が完了した人は全国で6割近くになり、米国を超えた。

 専門家の試算では、20~30代でも75%が接種するなどし、人の接触を4割減らす対応を続ければ、宣言のような対策は年1回程度に抑えられる。

 だが接種率が伸び悩んだり人の接触が増えたりすると、今後も繰り返し宣言を出す必要に迫られる可能性があるという。

 20~30代では接種完了者が30%超と低い。希望する若者が確実に接種できる体制が急務だ。

 政府は年内にも3回目の接種開始を見込む。混乱を避けるためにも供給体制を含めしっかりと準備を進めてもらいたい。

 注意したいのは、接種が先行した諸外国で感染が増加していることだ。感染は今後も反復すると見なければならない。

 冬場の感染拡大にも警戒が要る。さらに厳しい流行の「第6波」が指摘されている。

 第5波では、政府の想定を超えて感染が広がった。病床不足で多数の自宅療養者が生じた。

 教訓を踏まえて医療提供体制を見直すなど、第6波に向けた対策を進めてもらいたい。

 残念なのは、菅義偉首相がウイルス対策に専念するとして退陣を表明した後も、対応に誠実さが見えなかったことだ。

 ウイルス対策を巡り野党が求めた憲法53条に基づく臨時国会召集は結局実現しなかった。

 宣言解除に当たっては専門家から重点措置への移行を求める声が出たが、首相は「任期中に区切りを付けたい」として全面解除にこだわったという。

 任期に当てはめて解除を決めたのだとしたら、あまりに自分本位としか思えず疑問が残る。