被差別部落の地名が公開されれば差別を助長する恐れがあることは、歴史を踏まえても明らかだ。当然の判決だろう。

 社会に横たわる差別意識と向き合い、その根絶を改めて誓う契機としたい。

 被差別部落の地名リストをウェブサイトに掲載し、書籍化することは「差別を助長する行為だ」として、部落解放同盟と幹部らが川崎市の出版社側に削除などを求めた訴訟の判決が東京地裁であった。

 判決は「出身者が差別や誹謗(ひぼう)中傷を受けるおそれがあり、プライバシーを違法に侵害する」と断じ、該当部分のサイト削除と出版禁止、賠償金の支払いを命じた。

 出版社側は差別の意図はないとし、憲法が保障する学問の自由の侵害などと主張したが、判決は「研究の自由が制限されるとはいえず、公益目的でないことは明らか」と退けた。

 判決内容については理解できるものの、疑問を覚える部分もある。原告のうち個人情報を自ら公にしているケースなどについてはプライバシー侵害を認めず、敗訴となったことだ。

 このため、地名の一部は公開は禁じられなかった。

 裁判に参加していない出身者もいるはずだ。被差別部落出身と知られることが差別につながる可能性を指摘するのなら、全てが救済の対象となるべきではないか。矛盾しているとしか思えない。

 歴史を振り返ると、被差別部落出身者は、結婚や就職などでの差別的な扱いや偏見に苦しんできた。

 1970年代に地名を記した「部落地名総鑑」が出回り、多くの企業が採用などのために購入していたことが判明して社会問題化した際には、法務省は回収に動いた。

 注意したいのは、部落差別は決して過去のものとはいえないことだ。

 現在も、法務省の実態調査によると、部落差別や同和問題を「知っている」「何となく知っている」とした4157人のうち、7割超が「部落差別はいまだにある」と答えていた。

 交際相手や結婚相手が旧同和地区出身者であるか否かが「気になる」とした人も15・8%に上った。

 被差別部落を巡る情報の取り扱いという点ではインターネット時代を迎えて、より問題は深刻になっている。ネットではいったん情報が拡散すると消すことは難しく、検索により容易に出自が暴かれかねない。

 ネット上の被差別部落の地名情報や差別的な書き込みで、不安に襲われている人たちも少なくない。差別解消の取り組みを粘り強く継続すると同時に、そうした不安を生まない対策も講じなければならない。

 法務省は2018年に、ネットへの掲載を「原則として削除要請の対象とすべきだ」とする通知を全国の法務局に出している。これを徹底するとともに、被害防止と救済の仕組みをきちんと構築してほしい。