今夏オープンした宅配釜飯店の調理場でパートの相談に乗る黒井修さん(左)=燕市
今夏オープンした宅配釜飯店の調理場でパートの相談に乗る黒井修さん(左)=燕市

 新型コロナウイルス禍の長期化で苦境にあえぐ飲食店。宴会が消え、時短営業も余儀なくされた。先が見えない中、経営者は閉店や新事業の立ち上げなど矢継ぎ早の決断を迫られる。4日に岸田文雄内閣が発足したが、14日には解散し政治空白が生まれる。従業員を解雇せざるを得なかった経営者は「残った従業員を守るためにもスピード感を持った対策をしてほしい」と政治に求めている。

 「国の雇用調整助成金で助かったが、従業員の給与は半分近くに減った。不満をぶつける先もなく我慢するしかなかった」。新潟市や三条市などですし居酒屋を経営するオサムフーズ(新潟市南区)の社長黒井修さん(59)は振り返る。

 県内で最初の感染者が確認された昨年2月以降、客が急減。昨春に一部店舗を休業した。国が休業手当の一部を補填(ほてん)する雇用調整助成金を使うなどしたが、再開後、客がゼロの日も。昨夏に7店舗中2店を閉め、板前、パートを十数人解雇し、出店のため所有していた土地も売った。

 黒井さんは「会社をスリムにして守れる雇用を守ろうと思った。解雇した従業員には謝るしかなかった」と苦渋の決断を語る。

 新潟労働局によると、新型ウイルスによる影響を受けた企業向けに拡充された雇用調整助成金の申請件数は、昨年2月中旬から今年9月下旬までの累計で7万8379件、支給決定額は568億8607万円に上る。昨夏は1カ月間で6千件前後の申請があったが、昨秋以降はおおむね月4千件台で推移。従来の雇用調整助成金の申請が月十数件だったのに比べ桁違いに多い。飲食業や製造業の申請が多く、「飲食業は高止まっている状況」という。

 オサムフーズがリストラ後も残した5店では宴会がなく、燕三条駅近くや長岡駅の駅ビル内の店からは、首都圏からの出張客が消えた。パートの中には店の給与を頼りにしている人もいる。勤務時間が減り「稼げないなら他の職場を探すしかない」という切実な声も黒井さんの耳に入った。

 昨秋から新事業の検討を始め、宴会場を塾やヨガスタジオなどにすることを考えた。悩んだ末、パートがすぐ慣れる食の仕事をと、四国の宅配釜飯のチェーンからレシピやマニュアルなどを購入。国の補助金を使って燕市の店舗の2階にある宴会場を改装し、宅配の釜飯店を始めた。

 新たな求人はせず、居酒屋で勤務が減ったパートを充てる。今冬には2号店を新潟市の繁華街に開く予定で、宅配事業を経営の柱に加える。

 新事業はスタートしたが、既存の居酒屋の売り上げはウイルス禍前の半分ほどの状態が続く。10月からは最低賃金も大幅にアップし、賃上げを実施。賃上げ分を価格転嫁したいが、メニューの値上げをできる状況ではなく、IT導入によるコスト削減策を練る。

 黒井さんは「食材や資材も値上がりしていてきつい」とこぼす。ウイルス禍前であれば忘新年会の予約が入り始める時期だ。今冬は乗り切れるのか。感染拡大の勢いが落ち着きつつある中、国民に選ばれたリーダーには、消費喚起策の打ち出しを望んでいる。