衆院選を間近に控える中での新首相に対する代表質問だ。野党側が選挙を強く意識した質問をぶつけて攻勢をかけるのは当然だろう。

 しかし岸田文雄首相は、所信表明演説や従来の発言をなぞる答弁が目立った。

 感染症対応をはじめ重要課題は山積している。代表質問は13日までだ。議論を深め、有権者にしっかり判断材料を提示するという意味でも、もっと踏み込んだ説明を求めたい。

 岸田首相の所信表明演説に対する各党代表質問が11日、衆院本会議で始まった。

 最初に質問に立った立憲民主党の枝野幸男代表は、選挙で重要な争点になる新型コロナウイルス対策や経済対策を中心に切り込んだ。

 PCR検査の拡充や司令塔機能強化を巡り、具体策を示すよう要求。首相が掲げる「成長と分配の好循環」については、成長の果実の分配ではいつまでも好循環は進まず、まず適正な分配が必要と強調した。

 枝野氏は、質問の随所で「私たちの政権では」と繰り返し、具体的な政策や方針についても述べた。「政権選択選挙」である衆院選を念頭に置いてのアピールだろう。

 対する首相の答弁は迫力に乏しかった。

 ウイルス対策に関しては「危機管理の要諦は常に最悪の事態を想定すること」とこれまで同様心構えを繰り返し、早急にウイルス対策の全体像を国民に示すよう関係閣僚に指示したと述べるにとどまった。

 当面の最重要課題に対し、これでは物足りない。

 経済対策では「まず成長を目指すことが極めて重要で、その実現に全力で取り組む」と訴えた。「アベノミクス」と何が、どう違うのだろう。

 首相は富裕層の税負担引き上げを念頭に金融所得への課税強化を挙げていたが、先送りを表明した。本当に中間層を守れるのか。掲げる「新しい資本主義」はスローガン先行に映る。

 ウイルス禍で国民生活の疲弊が長期化し、経済対策や格差是正策への国民の関心は高い。期待も大きいだろう。より丁寧な説明を求めたい。

 首相答弁からは安倍・菅政権との違いはうかがえず、むしろ共通項が浮き彫りになった。

 所信表明では被爆地広島出身の首相として「核兵器のない世界」を目指すと訴えたが、枝野氏から核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を決断するよう求められると、否定的な姿勢を示した。

 被爆地や被爆者の失望感は深いに違いない。

 森友学園を巡る公文書改ざんや日本学術会議の会員候補任命拒否、甘利明幹事長の現金授受といった再調査や説明の必要性が指摘されている問題でも、答弁では首相が新たに指示を出すような姿勢は見えなかった。

 首相は所信表明で「信頼と共感を得られる政治」を目指す考えを示していた。これで国民に響くだろうか。