有権者一人一人が暮らしの足元を見据えた上で望ましい政治の在り方を熟慮し、一票を投じたい。

 衆院が14日解散され、選挙戦が事実上スタートした。選挙公示は19日、投開票は31日だ。現行憲法下で初めて、任期満了日(21日)を越えての衆院選となる。

 新型コロナウイルス禍は、国民の命と生活を守る上で政治の役割と政権の姿勢がいかに重要かを示した。そうした中で行われる初の全国規模の政治決戦である。

 感染禍の収束へ主導的役割を果たすことになる政権の選択につながる可能性が高い。

 岸田文雄首相の就任から解散まで10日間、解散から投開票まで17日間。ともに戦後最短で、異例の短期間での選挙戦となるが、各政党の政策や候補者の主張を吟味したい。

◆安倍、菅政権の教訓

 真のリーダーシップが首相に備わっているか。政権に危機に対応する能力はあるか。未曽有の感染禍は、いや応なくその現実をあぶり出した。

 安倍晋三元首相はウイルス対応で後手批判を浴び、唐突な全国一斉休校要請で混乱を招いた。「アベノマスク」など国民ニーズと懸け離れた政策も目立った。

 そして、持病の再発が理由とはいえ、感染収束が見通せない中で首相を辞任した。

 後継となった菅義偉前首相は緊急事態宣言の解除と発令を繰り返し、流行「第5波」の拡大を防げなかった。

 対策の切り札としてワクチン接種に力を入れたが、感染力の強い変異株の猛威を止められず、都市部では医療崩壊が発生した。

 懸念の声が強い中、菅氏がこだわった東京五輪・パラリンピックの開催が警戒の緩みにつながったとの指摘もあった。

 「安倍・菅政治」は、説明を軽視し、異論に耳を傾けない独善的な政治手法への批判が強かった。そうした体質がウイルス対策の迷走を招き、国民の不信につながった面もあろう。

 岸田政権になったからといって自民、公明両与党は安倍・菅政治のリセットと考えては困る。過去を棚上げしたままでは同種の問題が繰り返される懸念がある。

 岸田首相は、感染対策を巡り説明不足で国民の離反を招いた菅前政権を念頭に、所信表明演説で「信頼と共感を得られる政治」を打ち出した。

 その本気度を測る上でも、選挙戦で、森友学園を巡る公文書改ざんや日本学術会議の会員候補任命拒否問題といった「負の遺産」を含め、岸田首相や与党側が安倍・菅政治への反省や評価をどう語るのか注視したい。

◆「選択肢」どう届ける

 選挙の「顔」を代えて決選に臨む自民党に対し、立憲民主党は最大野党として国民に政権の選択肢を示すと訴え、共産党などとの野党共闘で政権交代を目指す。

 立民の枝野幸男代表は先の国会代表質問で政府のウイルス対応を「失敗」と断じ、政権交代した場合には森友問題の真相解明チームをつくる考えを表明するなど政権に対峙(たいじ)する姿勢を鮮明にした。

 問題は、訴えがどこまで有権者に届くかだ。

 岸田内閣の発足を受け、今月初めに共同通信社が実施した世論調査では、岸田首相が安倍、菅政権の路線を「転換するべきだ」との回答が7割近くを占めた。

 その一方、政党支持率では自民党が回復傾向となったのに比べ野党は低迷から脱せず、立民や共産などの野党の選挙協力への期待もそれほど高まっているとはいえなかった。論戦を通じ、こうした空気を払拭(ふっしょく)できるかが問われる。

◆地方振興の具体策を

 ウイルス対策、経済、福祉、外交・安全保障など選挙戦での論点が多岐にわたる中、忘れてもらいたくないのは地方振興だ。

 私たち県民の暮らしに深く関わる課題であり、とりわけ本県選挙区の立候補者には県内や地元振興につながる具体的な政策についても競い合ってほしい。

 6月発表の国勢調査の速報値では、本県の昨年10月1日時点の人口は220万2358人と戦後最少を更新した。

 5年前の前回調査からの減少数は10万1906人で、北海道に次ぐ2番目の大きさだった。本県の人口減少は加速しており、県勢の維持へ懸念は募るばかりだ。

 国は人口減少の克服を掲げ「地方創生」に取り組んできたが、効果は見えない。岸田政権が訴える地方デジタル化推進による都市との格差縮小も新味に乏しい。

 地方の人口減少は国力の低下という意味でも影響は大きい。国政を目指す各候補者は強い危機感を持って向き合ってもらいたい。