社会全体が疲弊する中で迎えた衆院選だ。国民の生活を立て直し、経済を再生していくため、これまで以上に政治に求められるのは信頼と実行力だろう。

 政治や政治家は国民の声に真摯(しんし)に耳を傾け、向き合ってもらいたい。ウイルス禍の収束を見据えて新たな社会像を示し、実現に導いていけるのかも焦点となる。

 衆院選はきょう19日公示される。投開票は31日に行われる。

 総選挙は4年ぶりで、事実上の任期満了選挙となる。

 これまでの政治を継続するのか、それとも転換を求めるのか。有権者はこの4年間を踏まえて論戦にしっかりと耳を傾け、冷静な判断を下したい。

◆「安倍・菅」の是非は

 発足したばかりの岸田政権にはまだこれといった実績がない。そのことを踏まえれば、まず問われるべきなのは任期の大半を占めた安倍・菅両政権の是非だ。

 安倍政権は経済政策「アベノミクス」で株価上昇を演出したが、経済成長は力強さを欠き、労働者の賃金は上がらなかった。

 18日に行われた与野党9党首による公開討論会で、岸田文雄首相はアベノミクスでは富が行き渡らなかったとした上で、「成長と分配の好循環で皆さんの所得を上げる」として「新しい資本主義」の実現をアピールした。

 立憲民主党の枝野幸男代表がアベノミクスで格差が固定化し、貧困が深刻化したと批判、「社会全体で支え合うための役割を政治が果たす」と訴えた。

 「成長も分配も」とする首相に対し、立民は分配政策で富裕層や大企業に応分の負担を求めるとする。どちらに実効性があるのか。

 森友・加計学園問題をはじめとする安倍政権下の「負の遺産」は、継承した菅政権でも国民が納得する説明はされなかった。

 菅政権下では日本学術会議会員候補の任命拒否の理由や、閣僚経験者が相次いで立件された「政治とカネ」を巡る問題についても丁寧に語られることはなかった。

 共同通信社の直近の全国電話世論調査では、岸田政権が安倍・菅両政権の路線を継承するべきかとの問いに7割近くが「転換するべきだ」と答えた。

 討論会で両政権の功罪を問われた岸田首相は「コロナ禍という国難の中で政治と国民の心が離れたことが、民主主義の危機だ」とし、正面から答えなかった。国民との間にズレはないか。

 2017年の前回衆院選は自民党が465議席のうち281議席を獲得して大勝した。しかし今回、与党に「安倍1強」のような勢いは見えない。

◆全6区で与野党激突

 前回は自民と公明党は定数の3分の2の計310議席を獲得したが、岸田首相らは今回、勝敗ラインを「与党で過半数(233議席)」と位置付ける。

 野党は、立民、共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党の5党が289小選挙区のうち210超で候補者を一本化した。共闘を前進させた形だ。

 野党第1党の立民は共産と閣外協力することで合意し、「本気の共闘」を強調する。

 小選挙区制が政権交代につながりやすい選挙制度であることからすれば、共闘で議席を確保し、キャスチングボートを握ろうとする野党の戦略は理解できる。

 これに対し自民は、安全保障政策などで考えが違う両党の連携は「野合」だと攻撃を強める。

 立民は「大きな違いは連携に持ち込まない」とするが、有権者の理解は得られるか。

 本県は6小選挙区全てで与野党がぶつかる構図となる。2区を除いて候補者を一本化した野党と、前回選挙区で2勝にとどまった自民の対決に注目したい。

◆ウイルス後どう描く

 感染禍は私たちが暮らす社会の脆弱(ぜいじゃく)さも浮き彫りにした。

 保健所機能は逼迫(ひっぱく)し、医療は窮地に追い込まれた。デジタル化の遅れがワクチンの接種予約やオンライン学習などに混乱を招いた。

 感染「第6波」が懸念される中、候補者には今後の感染拡大に備えて国民の命をどう守るのか語ってほしい。

 経済再生の具体策だけでなく、ウイルス収束後に目指す社会のビジョンを有権者に分かりやすく示すことも求められよう。

 東京電力柏崎刈羽原発を巡る失態が相次いで発覚し、原発政策への不信感が高まっている。再稼働問題と将来のエネルギー政策をどう考えるのか。

 何よりも、政治が国民の信頼を取り戻せるかどうかが問われている。各候補者はそのことを忘れないでもらいたい。