出退勤時に顔を検温器にかざすのが当たり前になった。気付けば体温測定が習慣になった。新型ウイルス禍の収束は見通せず、検温器の世話になる生活はまだ続きそうだ

▼「経済の体温計」の異名を取る数値もある。私たちが日頃買うモノやサービスの値動きを示す物価である。こちらも人体と同じで、過熱しても冷え込んでも困る。暮らしや企業活動に影響が大きいからだ

▼日本は長らく、デフレという経済の低体温に苦しんできた。一般に、健全な経済成長には緩やかな物価上昇が伴う。物価の番人とも呼ばれる日銀は、世の中に出回るお金を増やすことで景気を刺激し、体温を上げようと懸命になっている

▼でも私たち庶民にとって、物価は低いに越したことはない。ただでさえ今秋はマーガリン、コーヒー、冷凍食品と身の回りで値上げが相次ぐ。ガソリンも驚くほど高騰した。感染症禍に加え、値上げラッシュで家計は悲鳴を上げている

▼一方で、物価が下がれば売る側の企業は苦しくなり、社員の給与も上げられない。民間の給与は2年連続で減少した。経済協力開発機構(OECD)の統計では、日本の年間賃金は30年間ほぼ横ばいのままだ。正社員と非正規の格差も広がる一方である

▼衆院選が公示された。共同通信の先日の世論調査では、今回の選挙に関心がないという層が3割ほどいた。けれど、選挙結果は今後の経済政策や暮らしも左右するはずだ。冷めているのはもったいない。程よい熱気の選挙戦となりますように。