新型コロナウイルス禍が経済に打撃を与え、多くの女性が職を失うなど苦境に立たされた。白書はそのことがもたらした深刻な状況を映し出している。

 自ら命を絶つ人が増えないように女性の雇用環境を早く安定させなくてはならない。不安を抱える人を孤立や孤独に陥らせない体制の強化が必要だ。

 政府の2021年版自殺対策白書によると、20年の自殺者は全体で2万1081人となり前年より912人増えた。

 増加に転じたのは09年以来で、女性の自殺が増えたことが要因だ。男性は11年連続で減少したが、女性は前年より935人増え7026人となった。

 15~19年の過去5年平均と比べて「主婦」や「無職」が減った一方、「被雇用者・勤め人」が約3割増えた。原因・動機は「勤務問題」が多く、職場の人間関係や環境の変化が目立つ。

 見過ごせないのは、自殺増加の背景に、女性に多い働き方があると考えられることだ。

 厚生労働省は新型ウイルスの感染拡大で環境が変化し、「女性に多い非正規労働者が影響を受けた可能性がある」とみる。

 感染拡大した昨年5月以降、ウイルス禍に関連した解雇や雇い止めは累計で11万人を超え、半数を非正規労働者が占めた。非正規労働者は7割が女性で、飲食業や観光業など打撃を受けた業種で働く人も多い。

 感染拡大で仕事がなくなり、社会から孤立する女性の様子が浮かぶ。そうした中で生きる希望をなくした人が多くいたとすればやりきれない。

 流行「第5波」は全国で収束傾向にあるが、雇用環境がすぐに好転するわけではない。

 本県も有効求人倍率は7カ月連続で上昇してはいるものの、各業種で経営状況の回復遅れが懸念されている。ウイルス禍が雇用に与える影響には今後も警戒が必要だ。

 非正規労働者が「雇用の調整弁」にならないように注視しなくてはならない。

 女性の自殺は県内でも目立って増えている。人口動態統計によると、20年の自殺者は全体で413人と19年より5人増えた。このうち女性は141人で同21人増加した。

 事態を受けて県は女性向けの個別相談会に力を入れていくという。困窮し、深刻な悩みを抱える人はいないか、私たちも引き続き周囲に目を配りたい。

 全国を見ると、児童・生徒の間でも女子の自殺が増加していることが気掛かりだ。

 白書によると、20年に自殺した「学生・生徒」は5年平均に比べ女子が約140人増えた。約70人増だった男子の倍だ。

 国の自殺対策事業で民間団体が20年度に会員制交流サイト(SNS)で受けた相談は6万3千件で、その9割近くが女性、7割以上が20代以下だった。

 女性や若い人が胸の内を打ち明けやすいのは深夜から早朝にかけてだという。そうした時間帯にチャット形式の相談を強化するなど、一人一人に寄り添う支援体制の拡充を急ぎたい。