会社帰り、ぷらぷらと歩く道すがら、日が落ちた空を何度となく見上げる。ちょっとした気分転換になる。信号で足を止めたついでに仰ぎ見ることもある。夜空が人を引きつけるのはなぜだろう

▼無数の星に人々は神話を重ねた。月見という習慣もある。古くから人は、じーっとそこにある宇宙を見つめてきた。この季節の空はといえば、淡い光の星が多いのだという。地味な星座だとも言われる。眺める側からすれば地味で控えめであるのは悪くない。心が落ち着く

▼しかし、にぎやかになってきた。民間人が宇宙へ旅立つ。ロシアは俳優を連れていき映画を撮った。米国企業も90歳の俳優を高度100キロへと運んだ。地球周回3日間の旅も実現している

▼周回の旅費を支払った人物の発言から勝手に計算すると、旅費は1人当たり数十億円といったところだろうか。ガガーリンによる人類初の飛行から60年たったこの時代、宇宙は様変わりした。観光空間になり、富裕層ビジネスの場になった

▼きな臭さも漂ってくる。宇宙から世界各地を攻撃する兵器を開発すべく、複数の国が競っていると伝わってくる。「極超音速兵器」というらしい。ロシアも米国も既に「宇宙軍」を構える。他国の人工衛星を攻撃する「キラー衛星」も考えられている。競争のさまは安っぽいSF映画のようである

▼各国の野心は膨らむ一方で、軍拡が止まらない。ガガーリンの心を打った美しい地球が病み、宇宙全体をむしばんでいく。見上げる夜空が台無しだ。