東京電力柏崎刈羽原発6号機の原子炉建屋に隣接する建屋を支えるくいが損傷していた問題で、原子力規制委員会の更田豊志委員長は10日、2007年の中越沖地震で損傷した可能性が高いとの見方を示した。規制委は今後、損傷の原因や別の施設への影響の有無を東電に確認するとともに、年明けをめどに現地調査に入る。

 くいが損傷していたのは核燃料の出し入れなどに使う大物搬入建屋。東電によると、建屋基礎部分から岩盤に打ち込まれている鉄筋コンクリート製のくい8本のうち、1本で鉄筋が折れたり、曲がったりするなどの損傷が見つかった。

 規制委の10日の定例会合で石渡明委員(地質学)は、鉄筋が同じ方向に曲がっている点などが、過去の大きな地震で発生したくいの損傷とよく似ていると指摘した。

 更田委員長は10日の定例会見で、隣接する原子炉建屋など原発中枢部の耐震性は既に確認しているとして「安全に与える影響はほとんどない」と述べた。その上で「耐えられる設計にもかかわらず損傷したのなら設計の考え方や評価に疑問が生まれる。現地を確認し、議論を進める」との見解を示した。

 柏崎刈羽原発では今年に入り、テロなどを防ぐ核物質防護体制の不備が相次いだ。規制委が核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出したため、再稼働の見通しが立っていない。

◆「まさか原発施設で」驚く識者

 柏崎刈羽原発6号機大物搬入建屋のくいが損傷したのは、14年前の中越沖地震が原因となった可能性があるとの指摘を受け、耐震工学などの専門家らは「まさか原発施設でくいが壊れるとは」と驚き、施設の強度や隣接する原子炉建屋の揺れなどに影響しないか懸念を示した。

 県技術委員会委員の田村良一新潟工科大教授(耐震工学)は、くいの損傷という事実に驚いた。「地震でくいが損傷した事例は、1964年の新潟地震や1995年の兵庫県南部地震でもあったが、滅多にあることではない」と指摘。「一般の建物より安全に造ると思っていた原発で損傷したのがびっくりだ」と話す。

 東電によると、くいの損傷が見つかった建屋は核燃料などを運び入れる「入り口」で、原子炉建屋に隣接する施設だ=図参照=。

 田村教授は原因を「地震で地盤が激しく変形し、くいも持っていかれた(引っ張られた)」と推測。「また大きな地震が起きたら2本目、3本目が損傷する危険性もある」と懸念する。

 元県技術委委員の鈴木元衛さんも「くいが損傷すれば揺れが不均衡になる。隣接の原子炉建屋の揺れ方にも影響しかねず、簡単な話ではない」と強調する。

 6号機は、東電が先行して再稼働を目指す7号機と隣接する。今回の損傷発見を受け、周辺施設でもくいの健全性を調べる必要はないのか-。東電は「原子炉建屋などは地下深くの岩盤の上に直接建っており、くいがない」と説明する。

 ただ、6、7号機には他にもくいを持つ構造の施設がある。中越沖地震では、くいを持つ変圧器で揺れの影響による火災が起きた。耐震重要度の低い施設を甘く見たことが遠因だった。

 規制委の更田豊志委員長は10日の会見で、耐震重要度の低い施設のくいが健全かどうかについてまで点検対象を拡大することに否定的な考えを示した。ただ、田村教授は「7号機の関連施設でも地下で同じようなことが起きていないか、もう一度チェックしてもらう必要がある」とし、県技術委で議論が必要とした。