新潟県燕市の吉田中学校の女子生徒が9日に校舎から転落死した問題で、生徒はいじめ被害を遺書につづっていた。同校や市教育委員会は、いじめの早期発見を掲げていたが、11日時点で生徒からの相談は「確認されていない」としている。子どもたちのSOSをどのようにすくい上げるのか-。専門家は、子どもは自ら声を上げないという想定で、教員ら周りの大人が普段から見守るべきだと指摘する。

 10日夜に開かれた燕市教委の会見で、いじめの把握方法について問われた市教委の鈴木華奈子主幹は「兆候がなかなか見つけにくい状況にある子どもたちが現実にいることを、今回の件で強く感じる」と対応の難しさを認めた。

 燕市では2018年、男子中学生がいじめを受けて目を負傷した。市教委は教職員の研修を強化し、各学校と市教委がいじめの端緒を共有しやすいシステムを作っていた。吉田中でもいじめについてのアンケートや教育相談など、早期取り組みを実施。11月初めにアンケートをしたばかりだった。

 市教委では現在、転落死した生徒がいじめを訴えていたかなどを調べているが、11月のアンケートでは記入がなかったという。

 鈴木主幹は「声を聞き出す工夫がいかに大切か感じている」としたが、具体的な改善策については「(いじめの有無を調査する)第三者委員会の結果を踏まえ、着実に進める」と答えるにとどまった。

 市町村教委を支援する県教委も、児童生徒の悩みをいかに捉えるか、模索を続ける。

 県教委は、16年に県立新潟工業高1年の男子生徒=当時(15)=が自殺した問題を受け、20年に自殺予防教育プログラムを作成。生徒に対し周囲に悩みを打ち明ける方法などを教えてきたが、県教委生徒指導課は「いじめで苦しくても、被害を訴えられない子どももいる」と課題を挙げる。

 いじめ問題に詳しい上越教育大の高橋知己教授(学校心理学)は「被害者の子どもは、加害者からのプレッシャーだけでなく、親に心配を掛けさせたくないなどの理由で『助けて』と言いづらい」と指摘。「子どもは自分から声を上げないと考え、普段から教員や周りの大人が子どもの行動を観察することが大切だ」と強調した。

◆学校再開、校長「1人で苦しまないで」

 9日に女子生徒が転落死した燕市の吉田中学校では11日、県教委から派遣されたスクールソーシャルワーカーらによる、生徒の心のケアが始まった。同校では2日ぶりに授業が再開され、授業前の全校集会では、斉藤哲也校長が「1人で苦しまないでほしい。傷つけ合わず助け合って、笑顔で生活できる学校を作ろう」と呼び掛けたという。

 複数の生徒によると、全校集会では女子生徒が自宅に残した遺書について、いじめを示唆する内容のものと、感謝をつづったものがあったことが明かされたという。1限の授業では、命の大切さを学ぶ道徳が行われた。

 2年生の女子生徒は「まだ心の整理が付いていない。生徒が落ち着きを取り戻すにはもう少し時間が掛かりそう」と言葉少なに語った。別の生徒は「1人でもいいから悩みを誰かに話せるようにしたいと思った」と受け止めていた。