工事中の新潟駅に貼られた「にいがた2km」のポスター。市は、市民に都心の街づくりに興味を持ってもらおうとPRを進める=新潟市中央区
工事中の新潟駅に貼られた「にいがた2km」のポスター。市は、市民に都心の街づくりに興味を持ってもらおうとPRを進める=新潟市中央区

 新潟市は、リニューアルが進む新潟駅から古町までの都心エリアを「にいがた2km(にきろ)」と名付け、活性化を打ち出す。再開発促進や、先進技術を持った企業の誘致などで都心を「新潟の成長エンジン」に育てることを目標に据える。政策の方向性を示すなど行政内は着実に動きが進む。「2km」のネーミングから1年。街の主人公である市民には十分に情報が届いているだろうか。取り組みの現在地や課題を取り上げる。

 「にいがた2km」。新潟の都心軸であり、顔となるエリアだ。ただ2000年代に入ると、百貨店の撤退や老朽ビルの更新の遅れなど停滞が目に見えてきた。

 分かりやすいのが公示地価の推移。市の商業地最高地点は新潟駅前(中央区東大通1の2)だが、2011年と21年で比べると、1平方メートルで62万円から54万円に落ちた。かつてライバル視された仙台市の背中は遠くなった。北陸新幹線開業効果をつかんだ金沢市には抜かれた。富山市も背後に迫る。

 反転を目指す新潟市。約60年ぶりとなる新潟駅のリニューアルを機に、民間の再開発の動きが出ていること、新型コロナウイルス禍に伴う地方分散の流れなどを光明に挙げる。

 「今を逃したら、次のチャンスははるか先になる」と市関係者は力を込める。

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 中原八一市長が「一歩前進」と称した文章がある。9月に公表した「にいがた2kmの覚醒(かくせい)」だ。都心の街づくりの方向性を示した原案。昨年11月に「2km」の名称が打ち出されて以降、初となる取り組み案だった。

 ハード整備から経済、観光、農業まで推進項目は盛りだくさん。だが将来像が一目で伝わる「イメージ図」もなければ、各項目に対する数字の根拠もない。柱の一つ「8区と都心の連携」も具体論はこれからだ。

 古町地区でビルを経営する富山聡仁(としひと)さん(41)は「2km」を前向きに捉えながらも「ゴールが見えづらい」と指摘する。「事業の背景となる数字や成果目標を示した方が分かりやすい。取り組みの時間軸や、項目の優先順位を示すことも必要では」と提案する。

 市は民間からの投資や協力が、街づくりに欠かせないとして、作成時に約100の民間企業・団体から聞き取りを実施していた。

 だが、2kmエリア内の経営者は「(行政に求めることを民間に聞くのではなく)まずは2kmの目指す像を示してほしかった。市がやりたいことが分からなければ、われわれ民間のすべきことや、メリットが見えない」と述べた。

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 都心活性化は多くの自治体が抱える課題。財政状況は厳しさを増し、財源は潤沢ではない。そのため、民間投資を促そうと、先行する自治体も腐心する。

 全国から注目を集める福岡市の天神ビッグバン。15年のスタート時に「10年間でビル30棟建て替え」を目標に据え、建設投資効果と経済波及効果も数字で示した。同市都心創生課は「いかに民間活力を引き出すかというのが課題にあり、打ち出しの分かりやすさはシビアに検討した」とする。

 都心再構築を進める仙台市は、将来のイメージ図や補助の具体策、背景となる都心の現状をひとまとめで伝えた。発表も、補助事業の裏付けとなる予算案の発表より前だった。同市政策企画課は「財務側や議会と調整を重ねた。パッケージ化した方がインパクトがあると考えた」と説明する。

 後を追う新潟市。原案は未定稿として、今後具体化を進めるとするが、2kmの軸の曖昧さは否めない。街を歩く市民も、新潟日報社の調査で「2kmを知らない」との回答が7割を超えた。このほどPR動画を公開したが、今の2kmの映像が中心で、「未来の2km」の姿は伝わりづらい。

 原案の説明を受けた際、中原市長は「これで市民がすっと理解できるだろうか」として職員に絞り込みを指示した。政策実現には市民の理解と後押しが欠かせない。それだけに、さらなる一手が求められそうだ。

◆税収増に期待

 新潟市の都心の街づくりでは、都心軸を「成長エンジン」に育てるとする。中原八一市長は「万代だ、古町だといった一つのエリアごとでは、停滞の流れを止められない。都心部の2kmを一つに取りまとめて、活性化していきたい」と意義を強調する。都心から8区に成長エネルギーを波及させ、市域全体の活性化を狙う。最終的に税収増など財源確保につなげ、市の住民福祉の向上を図っていく。

 商業やビジネスの中心地である都心部。市の税収という面でも重みは大きい。例えば、景気に左右されにくく、市の基幹的な財源となる固定資産税。都心部の面積は市域のわずか0・3%だが、市の試算では同税の1割弱を、この地域が生み出す。地価上昇や老朽ビルの更新があれば、税収増に結び付く。

 ちなみに中心部の再開発を進めてきた富山市では、その成果として過去10年で中心部の固定資産税・都市計画税の収入が5・4%伸びたとアピールする。

 税収を稼ぐ地域だからこそ、都心部への再投資を求める声がある。新潟市も古町への庁舎移転や、総事業費約1500億円の新潟駅周辺整備事業を進めている。

 一方、合併に伴う、旧市町村との約束である合併建設計画で、2014年度までに約2700億円を投じていた。この点を挙げて、都心部への再投資が後回しになったとの指摘もある。

 開発に携わる市内の会社役員は「いずれにせよ、市の目線が都心部に向けられるのは歓迎」と述べた。

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