新穂中央青年会の鬼太鼓を体験する参加者。太鼓を打ったり獅子頭を操ったりした=佐渡市新穂潟上
新穂中央青年会の鬼太鼓を体験する参加者。太鼓を打ったり獅子頭を操ったりした=佐渡市新穂潟上

 新潟県佐渡市の世界農業遺産(GIAHS=ジアス)認定10周年を記念して10月末に市内で開かれたフォーラム。エクスカーション(視察観光)では、佐渡を代表する伝統芸能の鬼太鼓を体験するコースが組まれ、参加者は新穂地区の「新穂中央青年会」から獅子と太鼓打ちを教わった。

 獅子を体験した新潟食料農業大学3年、古田島海斗さん(20)は「芸能を見たり触れたりする機会を多くつくれれば、ジアスの認知度も高まるのではないか」と話した。

 ジアスは、伝統的な農業や棚田などの景観の維持保全はもとより、農村文化の継承も重要な構成要素になっている。佐渡では、鬼太鼓や能楽などの伝統芸能が生活に根付いており、島の大切な財産だ。

 佐渡では子どものころから鬼太鼓に親しんでいる市民が多く、集落の結束に欠かせない原動力となっている。担い手不足や高齢化といわれる中、集落では工夫しながら継承に力を入れている。

 学校での授業、地域での講演活動などを通じて交流や支援に取り組むNPO法人佐渡芸能伝承機構理事長の松田祐樹さん(62)は「伝統芸能の素晴らしさを共有することが大切」と語る。

 能楽も佐渡で盛んな芸能の一つだ。江戸初期、佐渡金銀山の開発などを進めるため佐渡代官(後の佐渡奉行)に就いた大久保長安が能楽師らの一行を伴ったことに由来するという。農業や家業の傍ら、自らが演者として能楽に携わり、神社に奉納する「神事能」として誰でも見ることができた。

 佐渡博物館館長の池田哲夫さん(70)によると、トビが上空を大きく旋回する様子を佐渡の方言で「とんびの能舞い」などと呼び、能舞台で楽屋から舞台に通じる渡り廊下を意味する「橋掛り」になぞらえ、糸口をつかむことなどを「橋掛りができた」と表現するという。池田さんは「生活の中に能楽が溶け込んでいる」と解説する。

 「伝統芸能の保存継承がジアスとどう結び付くのか分かりにくい」といった指摘がある。池田さんは「芸能は生活のリズムであり、つらい仕事を乗り越える励みにもなっている。それらを気付かせるのがジアスではないか」と語った。

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