「里山未来ユースサミット」で里山を活性化する案を発表する高校生ら=佐渡市両津夷
「里山未来ユースサミット」で里山を活性化する案を発表する高校生ら=佐渡市両津夷

 新潟県佐渡市では世界農業遺産(GIAHS=ジアス)認定以前から、官民がトキをシンボルとした環境保全型農業の推進に取り組む。

 農薬、化学肥料を減らすなど市独自の基準に沿って栽培された佐渡米を認証する「朱鷺(とき)と暮らす郷(さと)づくり認証制度」は、安心安全な米作りとトキの生息環境整備につながり、生態系の保全と経済活動を両立。農村コミュニティーの保全や伝統芸能の継承と合わせて「佐渡モデル」として国内外に発信している。

 「生物多様性の保全に共感する人たちが多かったことも効を奏した」。2011年のジアス認定時、市長を務めた高野宏一郎さん(82)は振り返る。

 一方、島内では年間約200戸のペースで農家の減少が進む。高野さんは「質を磨き上げることが大切」とした上で、「島の農業を支える人材の受け入れ、生物多様性や環境保全活動を進める地域づくりや地域間の連携が、価値の向上につながる」と指摘する。

 ジアス10周年を記念したフォーラムでは、佐渡と日本農業が進むべき方向性について議論した成果を「大会宣言」として発表した。生き物を育む農法の普及や拡大、多世代が一緒になって挑戦する島づくり、伝統芸能を継承する仕組みづくりなど7項目。佐渡のジアスの認知度を上げる取り組みも課題だ。

 学生らが里山農業について考えるイベントに取り組む新潟大学コミュニティデザイン室の准教授、豊田光世さん(46)は「若い世代のアイデアもジアスの活動につながる」と話す。ジアスをテーマにしたモニターツアーの企画を進めている生産者の相田忠明さん(47)は「背中を見せ続けることは地域を育てる力にもなる」と強調する。

 伝統芸能の継承について、佐渡文化財団では、鬼太鼓や能楽、神事芸能に関する調査などを行い、現状把握と情報発信に努める。同財団事務局長の宇治美徳(よしのり)さん(47)は「伝統芸能に触れられる機会をPRし、交流人口の増加や移住、定住の促進につなげたい」と説明する。

 佐渡のジアスは今後、人口減少などさまざまな課題に向き合い、持続可能な取り組みを進めていく。「佐渡は国内のトップを目指し、世界からも注目される手本になるよう取り組んでほしい」。高野さんはエールを送った。(おわり)

[里山は今 世界農業遺産10年]<1>はこちら