動き出した経済社会活動を維持するには、感染拡大に歯止めをかけることが不可欠だ。

 その体制を整えられるのは感染が鎮静化しているうちだ。対策に実効性を持たせるためにも政府は早急に医療現場などへの支援策を講じてもらいたい。

 政府は12日、今冬の流行が懸念される新型コロナウイルス感染の「第6波」に備えた対策の「全体像」を決定した。

 第5波の倍の感染力を想定し、感染者の重症化と病床の逼迫(ひっぱく)防止に力を入れる。医療提供体制の強化や飲み薬の確保などが柱となる。

 病床確保はワクチン接種の進展による抑制効果も考慮し、約2万8千人の入院が必要となった今夏のピーク時より3割増の約3万7千人を受け入れられるようにする。今月末までにその体制を構築する。

 対策の骨格を示した際は2割増としていたが、都道府県の検討を踏まえて引き上げた。病床使用率の想定は8割以上だ。

 全体像を決定した対策本部で岸田文雄首相は「最悪の事態を想定した医療体制の確保、早期治療の強化」を強調した。

 第5波では補助金をもらいながら患者を受け入れなかった「幽霊病床」があった。

 そのため、医療機関が病床の使用状況などを厚生労働省のシステムに入力することを補助金の支給要件とした。12月からは医療機関別の病床使用率を毎月公表するという。

 「見える化」を図ることで病床稼働率を上げる狙いだろう。

 だが重要なのは、計画した病床を稼働できるだけのマンパワーを確保することだ。

 人手不足を解消せずに無理に患者を受け入れれば、医療従事者の負担増を招きかねない。

 実効性のある対策とするために、政府は医療機関や自治体との連携をさらに深め、支援を強化してもらいたい。

 感染がさらに拡大した場合は、感染状況が落ち着いている地域も含めて、がんや脳卒中といった一般医療を制限し、人材派遣に協力を求めるとした。

 一般医療まで制限するのは最後の手段だ。そうした事態に陥らないよう、政府は適切に対応せねばならない。

 新たな対策は「国民が安心して暮らすための切り札」とし、年内実用化を目指す飲み薬を約160万人分確保するとした。

 薬事承認後、速やかに供給する方向で米製薬大手メルクと合意したという。

 海外の製薬会社とはワクチンの供給を巡って混乱したことがある。飲み薬ではその轍(てつ)を踏まぬようにしてもらいたい。

 都道府県は、感染拡大の兆しを受けて無症状者の無料検査実施を判断できるようになった。

 ワクチンは3回目接種が12月に始まり、薬事承認後には12歳未満の接種もスタートする。自治体はスムーズな接種の実現に向けて力を尽くしてほしい。

 再拡大を防ぐには、私たち一人一人が感染防止対策を徹底することが極めて重要だ。そのことも改めて肝に銘じたい。