かつては玄関先で、よくこの色紙を見かけた。野菜の絵に「仲よき事は美しき哉(かな)」の言葉。けれど、こちらのイラストに描かれたのは、カボチャやジャガイモのような3人の顔である

▼登場するのは田中角栄、児玉誉士夫、小佐野賢治の3氏。ロッキード事件で関係の深さが取り沙汰された面々だ。1976年4月、週刊朝日に掲載された。元ネタの色紙で知られた作家、武者小路実篤の訃報が届いた頃だった。「仲よき事は」の名文句が見事な皮肉となった

▼このイラストが載った、山藤章二さんによる名物連載「ブラック・アングル」が近く終了する。風刺が効いた著名人の似顔絵が人気だった。田中元首相は最も多く描かれた1人ではないか

▼83年、中曽根康弘元首相が当時のソ連に対する防衛網を日本に構築する「不沈空母」発言をした際は、田中氏の顔をした空母を描いた。政権が田中氏の影響が強い「田中曽根内閣」と、やゆされたことを踏まえた

▼同年には田中氏の顔をした車に駐車違反のステッカーを貼った作品も発表された。ロッキード事件で逮捕・起訴された後も議員にとどまったことを、国会で駐車違反をしているようなものだと当て付けた

▼山藤さんは欲や野心の強さが政治家の顔をつくるという趣旨のエッセーを書いている。「大物ほど描きやすい」とも。ところが今回の連載終了に際したコメントでは「最近の政治家の顔をみていると、あまり描く気にもなりません」。小粒化は国民にとって幸なのか不幸なのか。