自らの大学に関わる不祥事にもかかわらず、トップの理事長が一向に説明責任を果たそうとしない。日本大でまたも同じことが繰り返されている。

 私立大には国や自治体から補助金が交付され、大勢の学生が在籍する。社会的な存在と言っていい。それにふさわしい責任ある対応が不可欠だ。

 日大医学部付属板橋病院を巡る背任事件で、東京地検特捜部は、日大元理事の井ノ口忠男被告と大阪市の医療法人前理事長籔本雅巳被告を背任罪で2度にわたり逮捕、起訴した。

 両被告は先月、板橋病院の建て替え工事の設計監理業務を巡って日大から都内の設計事務所に支払われた着手金約7億3千万円のうち、2億2千万円を籔本被告側の会社に流出させたとして起訴された。

 今月には、医療機器などの納入で取引に必要ない籔本被告側の会社を介在させて利益を上乗せしたリース契約を結び、約2億円を流出させ日大に損害を与えたとして罪に問われた。

 立件額は計約4億2千万円に上る。一連の取引は、井ノ口被告が取締役として実質的に支配していた日大の関連会社「日本大学事業部」が日大の委託を受けて交渉などを担っていた。

 特捜部は両被告が流出資金を分け合ったとみている。井ノ口被告は1度目の逮捕後、理事を辞任した。学問の府を舞台に起きた、由々しき事件である。

 一方で、井ノ口被告は「日大に損害を与えていない」と起訴内容を否認しているという。今後の裁判の行方を注視しなければならない。

 井ノ口被告らが、多額の資金を日大の田中英寿理事長に提供したとする供述をしていることも気に掛かる。田中氏については適正に税務申告していなかった疑いも指摘されている。

 強い疑問を覚えるのは、こうした状況でありながら、田中氏に自らの言葉で説明しようとの姿勢が見えないことだ。大学側もホームページで「誠に遺憾」など形式的なコメントを出した程度で、あまりに軽い。

 2018年のアメリカンフットボール部悪質反則問題の第三者委員会最終報告でも、田中氏は「適切な危機対応をせず説明責任を果たしていない」と名指しされていた。

 最終報告は、反則を指示した前監督に物を言えるのは理事長の田中氏だけだったとし、ガバナンス(統治)が働かない状態だったとも指摘していた。

 今回の背任事件でも、井ノ口被告は田中氏の側近で、その威光を強調した言動があったと伝えられ、やはりガバナンス不全が言われる。田中体制下で起きた二つの問題には、通底するものがあるように思える。

 不祥事を受け、学生からは就職活動などへの影響を心配する声が上がっている。胸を痛めているOBも少なくあるまい。

 信頼回復のためにも、田中氏や大学当局はまず記者会見を開き、説明責任を果たすべきだ。うやむやで済ませることなど到底許されない。