避難所で使用する間仕切りなどの展示を見学する小学生=長岡市大手通2の「きおくみらい」
避難所で使用する間仕切りなどの展示を見学する小学生=長岡市大手通2の「きおくみらい」

 2004年10月の中越地震を語り継ぐため新潟県長岡、小千谷の両市に整備された「中越メモリアル回廊」の施設と公園が、オープンから10年を迎えた。地震から17年がたち、被災地でも記憶の風化が進む。拠点施設は、団体による防災学習の受け入れや避難を想定した体験イベントを強化するなど、次世代に教訓を伝える方法を模索する。中越地震の復興基金の残金を基に運営しており、施設の在り方をどうするかが今後の課題となる。(長岡支社・後藤千尋)

 「避難所でトイレが使えなかったらどうする」。10月下旬、長岡市大手通2の長岡震災アーカイブセンターきおくみらい。社会科の授業で訪れた市内の小学4年生を前に、運営する中越防災安全推進機構のスタッフが尋ねた。

 質問は、中越地震で実際にあった出来事を基にした。市内企業が震災後に開発した段ボール製トイレなども紹介し「中越地震の失敗を教訓に、新しいものを考え出しているよ」と説明した。児童は「便利な製品ができていてすごい」と、興味深そうに耳を傾けた。

 きおくみらいは映像や写真で震災の様子を紹介する施設だ。それだけでなく、機構は近年、市民に災害への備えを促す役割を強化している。21年度は学校向けの見学プログラムを始めた。移動のバス費用補助や学校での事前学習にも協力して利用を呼び掛け、10月までに56校が利用した。

 開館後、地震や水害は全国的に多発している。備えの大切さは市民に意識されるようになったが、準備の中身や被災時の行動などは十分に普及していないと機構はみる。マネジャーの赤塚雅之さん(50)は「被災しても生き残ることが最重要。ノウハウを伝えるのが、これからの施設の役割だ」と強調する。

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 中越メモリアル回廊は、きおくみらいと川口きずな館(長岡市川口中山)、おぢや震災ミュージアムそなえ館(小千谷市上ノ山4)の3施設と、山古志木籠集落の水没家屋などメモリアルパーク3カ所が11年10月に整備された。13年10月には、やまこし復興交流館おらたる(長岡市山古志竹沢)も加わった。

 中越地震で最大震度7を記録した旧川口町の川口きずな館は、NPO法人くらしサポート越後川口が運営し、親子連れや住民の交流拠点となっている。

 力を入れるのが、2年前に始めたアウトドア体験イベントだ。キャンプ場や避難所となる体育館が近く、親子で火おこしや体育館での宿泊を通じ、災害時に想定される行動を実践する。法人の覚張裕香さん(36)は「遊びの中から楽しく防災や減災を学べる場にしたい」と語る。

 一方、小千谷市のそなえ館は、首都圏の自主防災組織など団体見学の受け入れに注力する。防災意識の高まりから、19年度は新潟県内外から過去最多の約900件を受け入れた。新型コロナウイルスの影響で20年度は減少したが、21年度は近隣県にもPRしている。

 また、おらたるは市の支所や診療所に隣接しており、住民が気軽に足を運べるのが利点になっている。

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 新潟県外からの視察もあった川口きずな館では、新型ウイルスの感染拡大以前から視察目的の来場者が減少しているという。11年の東日本大震災の被災地に近年、伝承施設が開設されていることも一因とみられる。

 各施設は新潟県の中越大震災復興基金の補助で整備、運営されてきたが、基金は19年度末に事業を終了。施設は長岡、小千谷両市が引き継いだ基金の残余金を財源に、25年度までは各地の団体が運営を継続する。

 ただその後は決まっておらず、財源や運営方法を含め、両市などが施設の在り方を検討していく。

 22日の記者会見で、長岡市の磯田達伸市長は「震災の記憶と体験を継承し、地域の活性化や情報発信の拠点にもなっている」と施設の役割を評価。「今後も長岡にとって必要な施設。市の責任で維持し、機能を強化したい」と述べた。