家庭や学校給食で使われる金属製のスプーン。国内で生産される多くが新潟県燕市(つばめし)製といいます。(なめ)らかでピカピカのスプーンは、職人技から生まれます。燕市の工場を(たず)ね、製造の流れを見せてもらいました。(報道部・中島(なかじま)映子(あきこ)

金属洋食器の一大産地

 「ガチャン、ガチャン」。規則正しい機械音が(ひび)きます。訪ねたのは、金属洋食器の製造販売(はんばい)手掛(てが)ける燕市の「燕物産」です。(ささげ)和雄かずお)社長(68)が工場を案内してくれました。

 スプーンの材料は主にステンレス板です。まず、板を打ち()いて原型を作ります。次に、口に入れる先端(せんたん)部分を(うす)()ばし、丸い輪郭(りんかく)に切り()きます。持ち手の部分をプレスして模様(もよう)を付けた後、丸くなった先端(せんたん)部分をくぼませて(みが)きます。洗浄(せんじょう)し、(きず)がないかを確認して出来上がりです。「高級品ほど人の手がかかります」と捧社長。作業は機械を使って行われますが、職人さんの手も欠かせません。

伸ばし、磨き 経験が大切

 先端部分を薄くする作業を(にな)うのは、職人歴約60年の斎藤(さいとう)政明(まさあき)さん(78)です。回転させた二つのローラーの間に先端部分を(はさ)み、ひっくり返しながら左右均等に()ばします。厚さ5ミリの板を基準の1・5ミリにするには感覚が(たよ)りで、気温により金属の(かた)さが変わるため長年の経験も必要です。「やりながら覚えてきました。ここで精度を上げないと次の工程がうまくいきません」と力を()めます。

 磨く作業は、研磨剤(けんまざい)()った布製の円盤(えんばん)を高速で回転させ、スプーンを押し当てます。円盤の種類や大きさを変えながら、凹凸(おうとつ)を取って表面を滑らかにし、ツヤを出していきます。高級品になると、側面の細かな部分に加え、くぼみや持ち手も全て職人さんが磨き上げます。力加減に注意し、ムラなく仕上げることが大切です。担当する星野(ほしの)勇太(ゆうた)さん(28)は「一から十まで自分の(うで)次第。やりがいもプレッシャーもあります。集中力がいる繊細(せんさい)な仕事です」と熱心に手を動かしていました。

 出来上がったスプーンは鏡のように(かがや)いています。捧社長は「ヨーロッパに形やデザイン、品質を学び、職人たちが燕の商品として作り上げてきました。身近なスプーンの多くが燕で作られていることを知ってほしいです」と話していました。
スプーンの作り方 主な流れ(左から右の順に)
 (1) 金属板を打ち抜いて原型を作る
 (2) 先端を薄く伸ばす
 (3) 先端を丸く切り抜く
 (4) 持ち手に模様を付ける
 (5) 先端をくぼませる
 (6) 磨いて完成

ニックちゃんのカレースプーンが登場

 やあ、僕ニックだよ。持ち手の部分に僕のデザインロゴが付いている「ニックちゃんのカレースプーン」が今月、発売されたよ。

 ロゴは、ウインクする僕の目元をデザインしたんだ。大人も子どもも使いやすいように大小2サイズ用意したよ。僕がカレーライスのお皿につかるユニークなスプーン置きもセット。食卓が楽しくなったらうれしいな。

 もちろん、このスプーンも燕市で作られたんだ。先端を平らにして角を付けたり、くぼみを浅めにしたりして、カレーをすくいやすくなっているよ。

新潟日報メディアシップの1階で販売していて、大小各サイズとも1本1290円(税込み)だよ。
新潟日報グループのキャラクター「ニックちゃん」をあしらった「ニックちゃんのカレースプーン」