新型コロナウイルスの感染抑止に「先手」を打つのは大事だが、拙速な対応で迷走しては国民が不安を抱く。

 政府はもっと連携を密にし、信頼される対策を示す必要がある。岸田文雄首相はそのために統率力を発揮してほしい。

 世界的に感染が広がる「オミクロン株」の水際対策として、国土交通省が日本に到着する国際線の新規予約の受け付けを停止するよう航空各社に求めたが、わずか3日で撤回した。

 受け付け停止の方針に、航空券を予約していない海外の日本人駐在員や出張者らから、年内に帰国できなくなると心配する声が相次いだ。方針が撤回され、安堵(あんど)した人は多いだろう。

 首相は「一部の方に混乱を招いた」と陳謝し、斉藤鉄夫国交相も謝罪した。2人とも方針を知らされていなかったという。

 事態を招いたのは国交省航空局の勇み足だ。

 政府は海外でのオミクロン株感染拡大を受けて11月29日、全世界から外国人の新規入国を禁止すると決めた。

 対策には「到着便の新規予約抑制」も含まれていたため、国交省は航空局だけの決裁で、12月末までの新規予約一律停止を決め、航空各社へ要請した。

 航空局はこれまでに何度もウイルス禍に伴う減便要請を航空各社に行っており、今回もその事務連絡の一環と判断した。

 12月はクリスマス休暇があるため既に多くの予約が入っていると考えたという。在外邦人への影響を軽く見たのではないか。想像力を欠く対応だ。

 新規予約について、政府は日ごとの空き状況を考慮して対応する方針だ。しかし12月の予約は多くの日で既に上限まで埋まっているという。

 海外にはウイルス禍で長期間、日本に帰れなかった邦人が多く暮らしている。政府には希望者全員が帰国便を予約できるような配慮を求めたい。

 気になるのは、予約停止という重い方針が、首相や国交相に伝わっていなかったことだ。

 首相は政権運営の姿勢として官僚を含めた「チーム力」を掲げるが、実態はどうなのか。

 今後もウイルス対応をはじめさまざまな局面で、首相が司令塔となり閣僚や官僚を掌握できるか注視しなければならない。

 水際対策では、国交省のほか、出入国管理を担う法務省、厚生労働省、外務省など関係する機関は多岐にわたる。

 対策を円滑に機能させるためにも、官邸がまとめ役となって縦割りに陥りかねない省庁間の壁を取り払ってほしい。

 政府は外国人の入国禁止を緊急避難的な予防措置としているが、世界保健機関(WHO)はこの対策は疫学的に理解困難だと批判している。

 入国措置を巡ってはいずれ再開の判断を迫られる。政府はオミクロン株の感染力や特性を十分見極めなくてはならない。

 感染を水際でしっかりと食い止めるためにも、ウイルス検査や入国後の隔離対策など態勢をさらに手厚く整えてほしい。