12月、新潟の沿岸は風の季節である。北西の季節風が強まり、みぞれや雪を運んでくる。そうかと思えば雲が吹き飛ばされ、穏やかな日差しとともに風が柔らかく頰をなでることもある

▼時に強く、時に厳しく、時に優しく。さまざまな表情を見せる大気の動きを「千の風」と呼んだのは言い得て妙だった。刻一刻と変わる自然現象と、人の命のありようを結びつけた歌が「千の風になって」である

▼私の命はいったん終わりを迎えたけれど、千の風になって、光にも雪にも星にだって私は息づいている-。作者不詳の英語の詩に、こうした意味の日本語訳と曲をつけたのは新潟市出身の作家、新井満さんだ

▼この詩との出会いは、ふるさとがもたらした縁だった。幼なじみの妻で、市民運動に情熱を注いでいた女性が亡くなり、追悼文集に詩が紹介されていた。新井さんは詩の中に、命あるものの死と再生、そして大いなる命の循環というテーマを見いだし曲を作った

▼「千の風になって」は多くの人の胸に響いた。人の命はいつか終わる。誰しも大切な人との別れは訪れる。喪失感を抱えて、胸にぽっかり空いた穴に、この歌はゆったりとしみ込んだ。人が生まれ、人が死んでいく限り、歌い継がれていくのだろう

▼新井さんは、歌が生まれるいきさつをつづった一文にこう書いた。「人間が死ぬと、まず風になる。次に、様々なものに生まれ変わる」。訃報が届いたきのうも千変万化する風が吹いていた。ふるさとに帰ってきたのだろう。