十分な説明を欠いたまま工事を推し進める国の強権的姿勢に対する、地元からの抗議の意思表示だ。

 国は沖縄の民意を尊重し、移設計画の見直しも視野に地元ときちんと話し合うべきだ。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設計画を巡り、埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤に対応するため防衛省沖縄防衛局が申請した設計変更について、玉城デニー知事は不承認とした。

 政府は行政不服審査法に基づく審査請求を検討している。ただ、不承認が取り消されても知事が承認する見通しはなく法廷闘争に発展する可能性が高い。

 玉城氏は不承認の理由として、地盤の安定性が十分検討されておらず、絶滅危惧種のジュゴンに与える影響に関しても調査が不十分とした。

 その上で「完成が見通せず事実上無意味な工事を継続することは許されない」と移設計画に疑問をぶつけた。

 背景にあるのは、「辺野古移設ありき」を押し付けてきた国の強権的な姿勢と不誠実さへの不信感だ。

 知事選で玉城氏が勝利し、県民投票では辺野古埋め立て反対が7割超を占めるなど、民意は「移設ノー」を示してきた。

 にもかかわらず、政府はこれまで「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返し、移設推進を改めようとしない。

 丁寧な説明をせず、沖縄にだけ痛みを押し付ける手法に地元が反発を強めるのは当然だ。

 軟弱地盤の問題を巡っては、最近も信じ難い事実が報道で明らかになった。

 埋め立てが始まる3年前の2015年の段階で、防衛局が地質調査した業者から地盤に問題があると報告を受け、防衛局も内容を確認していながら、公表していなかったのだ。

 政府は土砂投入を始めた翌月の19年1月にようやく軟弱地盤の存在を認め、大規模な地盤改良が必要と正式表明したが、もっと早く沈下の懸念を把握していたことになる。

 「不都合な報告」を伏せたまま埋め立てを推し進めようとしたということか。意図的な隠蔽(いんぺい)と取られるのは仕方なく、政府にはこうした経緯についてきちんと説明する責任がある。

 辺野古移設は工期が当初の5年から約9年3カ月に延長され、総工費は約9300億円に膨れ上がった。

 普天間の返還時期は日米合意の「22年度またはその後」から30年度以降にずれこむ見通しとなるなど迷走が続く。

 米シンクタンクには工費膨張で「現行計画のまま完成する見込みは低い」との見方もある。

 安倍、菅両政権が辺野古移設の既成事実化を急ぎ、沖縄との溝を深めた点は否めない。

 岸田文雄首相は就任以来「聞く力」をアピールし、丁寧な説明と対話を通して沖縄と信頼を築くとしている。

 対話による解決の場を求める沖縄の声を受け止め、新たな道を探ってもらいたい。